エピソードまとめ

□レオ・フルカード
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ep.2 気高き者
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「ん?なんか人がいるな」

ディランブレ戦傷地帯を進んでいると、先の広い荒野に荷車といくつかの人影が見え、レオ達はそちらへ走っていった。

荷馬車の傍に居たのは連邦兵が一人と、男性、女性、女の子のひと家族だった。

「ブレイズの皆様!任務、ご苦労様です!」

近づくなり、連邦が敬礼をした。

「俺達のこと知ってるんですか?」

「先ほど駐屯地の危機を救っていただいたと伝令が!」

「そうでしたか。そちらの方々は?」

ユーゴは気になって、兵のそばに居る家族を見た。

「今回、連邦が接収したジナーホルツ村の民間人です」

「つまり、元帝国の」

「はい。この機会に村を出たいと言うので、バイヌセット砦から帰還するついでに、ルディロームまでの護衛を買って出たのです」

「おお、そりゃ、気高いっすね!」

感動してレオが声を上げる。

「けだか……?」

「気にしないで下さい。しかし、なぜ急に村を出る気に?」

ユーゴはレオのいつものに少々呆れながら兵にそう伝え、その後、家族の大黒柱へ話を振った。

「……あの村は少々危ういので」

「戦争の前線地域ですもんね」

「もちろんそれもあるのですが、それ以上に元々………ひっ!」

男は、話している最中にいきなり悲鳴を上げる。

「な、なによ、突然」

セリアが驚く後ろで、アオーンとガルルの鳴き声が聞こえた。


「獣か……」

レオは急いで刀を抜いた。

「民間人に被害が出ないように、俺達でやるぞ!いけるよな、ユーゴ、セリア!」

「もちろん」

ユーゴが長剣を抜き、

「最初からそのつもり」

セリアも弓を構え、背中の矢筒から矢を取り出した。

家族は連邦兵に護衛を任せ、三人は集まって来た獣─ガルルとバンスを退治していくのであった。


「凄い……これがブレイズの力……」

獣の群れをあっという間に捌いた三人を見て連邦兵は唖然としていた。

「お怪我はありませんか?」

「はい、無事です!」

「そいつあ良かった。っとユーゴそろそろ……」

「だね。では僕らは任務に戻らせていただきますね」

「ありがとうございました。どうかご武運を」

「ええ、そちらも」


そう挨拶したものの、先に向かう前に、もうひとつ気になることがあって、ユーゴは獣に震えている娘を宥めていた家族の男に声を掛けた。

「どうされました?」

「先ほど言いかけてた、村を出た理由ってなんですか?」

「たいした話じゃないんですよ。あの辺は元々地盤に不安がある土地でして」

「地盤に不安?」

「先日、帝国兵が話しているのを偶然聞いてしまったのですが、大きな地震でも来れば崖崩れでひとたまりもないとか」

「なっ!」

「まあ、実際は地震も少ない地域ですし、そこまで不安がることではないのですが、ただ聞くと気になってしまい……」

「気持ちはわかります」

と、セリアが頷く。

「なので村の他の者にも話していないのです。取り越し苦労で不安がらせてもいけないかなと……」

「よくわかります」

今度はユーゴが頷いた。

「ははっ、ユーゴ的な考え方だな。そういうカタチの気遣いも全然アリだと思うぜ」

「そう言ってもらえると救われます」


話を聞き終えて今度こそ三人は、バイヌセット砦に向けて歩いて行くのだった。


「……崖崩れ……か」

「始まりましたねえ、レオお父さんや」

「始まりましたなあ、セリアお母さんや」

考え込だしたユーゴを見て2人は茶番を始める。

「ガツンと背中でも叩いてやりましょうか?」

「ははっ、セリアらしいな。けど、今はやめとこうぜ」

「そう?」

「ああ。ユーゴはユーゴで存分に考えたらいいのさ。人には人それぞれの気高さがあるんだから」

「……今、気高さ関係ある?」

そうこう言っている間にあっという間に、バイヌセット砦に到着した。
砦の焼け焦げた門の前には、連邦兵が門番として立っていた。

「貴方達はブレイズの……。お話は伺っております。どうぞ、お入りください」

「バイヌセット砦か……。こんな大きいとこ、教官達で落としたのよね」

「……とんでもねえよな」

たった三人で攻め落としたと聞いていたので、実際の砦の大きさに驚きながら、三人は中へ入っていくのであった。


【CHAPTER4 気高さのカタチ】
998Y.C. 森国シルヴェーア バイヌセット砦

「さて……ここを調査するのよね」

「ひとまず、砦内を見て回るか」

門の右手側に立った建物の中へ入っていく。
正面玄関から続く道は鉄格子が降ろされ封鎖されていた。

「この先はまだ戦闘の爪痕が残っている。立ち入りは遠慮してくれ」

そう言われ三人は右側の通路を進んでいく。

「うう……腹減った……」

道中の廊下で腹を抑える兵士がいた。

「さっき、パン屋が食堂へ配達に来てたから仕事が終わったらいただくとするか」

「へえ、配達なんて来るんすね」

「……なんだお前ら」

急に声をかけられて兵士は驚いた顔を見せた。

「食堂は右手の廊下を行ったとこだが、俺の分も残しておいてくれよ」


話を聞いて三人は食堂へ向かってみた。

「ったくあの村の連中にも困ったもんだぜ」

食堂に入るとそんな話し声が聞こえた。

「まったくだ。元帝国領だけあって連邦に反抗的で困る」

「その割には要求だけは一人前なんだよなあ」

「村の近くで不審者を見たから、見回りしろだっけ?」

「カールとかいうパン屋のガキの話だろ?俺達を用心棒かなにかだと思ってやがる」

「で、どうするんだ?」

「さすがにそんな余力はねえだろ。ただでさえ、人手が減らされてるってのに」



「……今の話、気になるな」

話しを聞いてユーゴがぽつりと呟き、れおは頷いた。

「ああ、詳しく聞いてみよう」

そう言って、レオ達は話をしている兵士たちに近づいた。

「なんだあんたら」

「バカッ、この方々は伝令にあったプレイズの……」

「し、失礼しました!」

慌てて背筋を伸ばして敬礼する。

「いえ構いません。それより、不審者が目撃されたと」

「そうなんです。この砦と一緒に接収したジナーホルツ村なんですが、そこの連中が廃坑近くで不審者を見たとか」

「廃坑……」

「調べてやらねえのかよ。その村だって今や立派な連邦領だろ?」

「それはそうですが、人手が不足していて……」

兵士は困ったような顔をした。

「じゃあ、あんたらに代わって俺達が見てくるよ」

「いいのですか?」

「ちょっと、レオ。またそんな寄り道を……」

「いや、セリア。これは……寄り道じゃないかも」

「ユーゴ?」

いつもなら一緒にレオの暴走を止める側のユーゴが、そう言いセリアは首を傾げた。

「ジナーホルツ村だったよな、行こうぜ二人とも」

「……別にいいけどさ」

しょうがない、と言うようにセリアは呟く。

「よろしくお願いします。村へは砦の左側の門から行けますので」


兵士たちと別れて、三人は食堂を出て、ジナーホルツ村を目指すのだった。

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〔砦内会話 廊下の兵士〕
「村の奴らめ……俺がなにをしたっていうんだ……。ちょっと声掛けただけで、白い目を向けやがって………。でも、あの酒場の女の子かわいかったな……」


〔砦内会話 武器庫〕
「帝国が残した物資で使える物がないか見てるんだが、一人で中を回るのは大変だよ……」

「確かに兵の配置が少ないような……。占領したばかりの砦はやることだらけで、本来もっと兵が詰めてるべきじゃ……」

「まあ、教官達がこんなに早く、砦を落とすって思ってなかったんだろ」
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