エピソードまとめ

□レオ・フルカード
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ep.2 気高き者
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「おい、大丈夫か!」

右側の門に向かえば、兵士が二人倒れていた。

「うう………あいつら……」

一人だけ、意識を回復したようで、上半身をゆっくり起こした。

「四人掛かりで来るとは、卑怯な……」

「四人?」

ユーゴは、おかしさに気がついた。

「誰にやられたんだ?」

「……帝国兵の捕虜達だ」

「やっぱりな……」

「…しかし、捕虜は三名では……」

おかしな点をユーゴは告げるが、

「んなことより、そいつらは今どこに?」

レオの質問でかき消されてしまった。

「そこの門から逃げて行ったよ。あの先にはリュンヌがある。早く追わなければ……」

「地爆石を持った帝国兵が街に迫ってるっつうのかよ!急ぐぞ、二人とも!」

「ダメよ、レオ。一度、報告へ戻りましょ」

「んなことしてる場合じゃ……!」

「僕達はブレイズだ。きちんとした手筈は踏まないと」

「くそ……」

学生である身分を歯痒く思いながら、レオは、駐屯地内の兵長の元へ走った。

「……なるほど。今回の爆発は、帝国兵の捕虜の仕業で、地爆石を盗み、リュンヌ方面へ逃走した……と」

「だから、早く追いかけねえと!」

「しかし、現状まともに戦える人員が……」

爆発に巻き込まれ怪我をした兵が多く、怪我をしていない兵は消火活動に追われている状態……。駐屯地の警備を捨ておく訳にもいかず、兵長は困り果てた。

「なら、俺達に任せて下さい!」

「よろしいのですか?」

「もちろん!な、セリア、ユーゴ!」

「ええ」

「……そうだね」

レオの言葉に二人は頷く。

「ただ、その前に気がかりな点が……。捕虜は三名とのことでしたが、逃亡したのは四名らしく……」

ユーゴはずっと気になっていた事を告げる。

「その件ですか……」

何やら兵長には心当たりがあるようだった。

「お恥ずかしい話なのですが、駐屯地の人間に、脱走を手引きした者がいたようで。その者が物資の地爆石を帝国兵に……」

「な、なんだって!?」

「そういうことでしたか」

「脱走兵はもちろん、内通者であったことがバレた兵も決死の覚悟でしょう。なにをしでかすやら……」

「どうやら、猶予はなさそうね」

「ああ、急ごう!」


三人はポワトゥー駐屯地の右手側にある門へと走って行った。


「よし、脱走兵を追うぞ」

「爆発物を持った逃亡者なんて危険過ぎるわよね」

「ああ。リュンヌに被害が及ぶ前に阻止しねえとな!」

門を抜け、すぐ近くにある吊り橋を渡って三人は荒野へ足を踏み入れるのだった。



998Y.C. 森国シルヴェーア ディランブレ戦傷地帯

〔道中会話〕
「ほとんど有用性のない地爆石を、こんな小型の装置で……」

「んだよ、ユーゴ」

「さっきもらった帝国のリアクターさ。この構造は興味深いよ。ボタンを押すだけで数秒後には発火できるなんて」

「なんてことない装置なのに、地爆石と組み合わせると凶悪ね」

「うん。連邦にはない発想だよ。リアクターの多様性には目を見張るものがあるなあ」

「あ?んなのエンブリオの下位互換だろ?」

「出力的にはそうかもしれないね。けど大事なのはそこじゃない。汎用性と拡張性が抜群だ。だからこそ今回のような芸当も……」

「なんだか随分と帝国の技術に興味あるんだな」

「そういうわけじゃ……」

「……わりい。責めてるわけじゃねえんだ」

「いや、僕が不謹慎だったよ。被害が出ているというのに…………ごめん、レオ。この装置はキミが持っていてくれ」

「……俺が?まあ…いいけどよ……」

「と、とにかく今は帝国兵を追いましょ!」

「……だな!」

「そうだね。蛮行は絶対に許さない」



〔道中会話〕
「相変わらず、この辺りはシルヴェーアらしくないな」

「これも帝国のせいなんだっけ」

「というより戦争のせいかな。激しい衝突のあった地域だから」

「つまりは"帝国のせい"だろ?」

「……それは、僕達側の視点からすれば そうかもしれないけど……」


〔道中イベント〕
「……ばあちゃんも、俺の故郷も……。全部……あいつらが奪ったんだ。これ以上なにも奪わせない。絶対に俺が止めてやる。……気高く戦い抜いてやる」

「レオ……」

「そう…だね……」

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ディランブレ戦傷地帯を進み、リュンヌまであと少しという所で、誰より目のいいセリアが気がついた。

「ねえ!あそこにいるのって!」

「帝国の奴らだな!ようやく追いついたぜ!」

崖の近くで、恐らく地爆石の入った荷車を引いて歩く帝国兵たちの姿を見つけた。その中に一人だけ、連邦兵の鎧を着ていた。

「待て!」

レオが声をかけると、帝国兵たちは馬車を捨ておいて武器を取った。

「もう来やがったのか!」

「武器を捨て大人しく投降するんだ!」

「ざけんな!結局、殺されるだけだろうがよ、特に俺みたいな裏切り者はな!」

連邦兵がそう叫ぶ。

「……貴方が内通者でしたか」

「ああそう。だから許されるはずないだろ!どうせ死ぬなら、連邦の人間を大量に道連れにしてえ、"英雄"になるんだあ!」

「……腐ってる!」

「……もう充分だ。最後にてめえらに見せつけてやるよ。気高い英雄の戦いってやつを!」
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