エピソードまとめ

□レオ・フルカード
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ep.1英雄の卵達
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【CHAPTER1 逃亡者】
998Y.C.森都シルヴェーア アンスワン森林
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甲に翠の輝石──エンブリオの付いた手を伸ばし太陽に翳す。

「なあ、天国のばあちゃん」

長い赤毛を高い位置で括った青年は、地に寝転がったまま腕を伸ばし、そう呟いた。

「あんたから見て、今の俺ってさ……。相当ヤバイよな?」

そう悠長に呟く彼の周りには狼の様な姿をした獣、ガルルの群れが体を低くし唸りながら彼を囲んでいた。

「マーボーカレー飯店の辛さ基準で言ったら"10"以上…か?」

そう言って青年は上半身だけ起こす。

「ああ分かってるさ、ばあちゃん。そうだよな………」

ゆっくりと立ち上がり、右手に握った刀を肩に乗せる。

「周りなんて、結局関係ねえんだよな……。たとえ、絶望的な結末が変わらないとしても……」

腕を大きく回し、刀を正面に向け左手を添える。

「それでも最後まで"気高く"戦い抜くのがフルカード流ってもんだよな!っしゃあ、いっくぜえええええ!!!」


刀を構え、ガルルに向かって走る。

「まあ要は気持ちの問題だよな」

飛びついて来たガルルを1匹斬り伏せる。

「大勢の獣に囲まれてるって考えずに常に1体1で戦ってると思えば、激辛マーボーカレーだって甘口に感じるはず!…だよな?」

1匹倒して距離を取り、ヒットアンドアウェイで1匹ずつ処理をしていくが、草場から大きな影が飛び出した。
ガルグラン──ガルルより大きな体と爪を持った獣がまた数匹のガルルを引き連れて現れた。


「これで、何体倒したっけな……」

刀を地に刺し膝を付き肩で息を吸う。

「でも、ま、いっか……おかげで…あの行商人のにーちゃんが逃げる時間は、もう十分に稼げただろうし……」

息を整え、立ち上がる。

「あとはただ、俺がどこまで"気高く"戦い抜けるか、だな……よし……じゃあ張り切って最後の喧嘩を始めるとするか!」

剣を構え直し、再び獣と合間見えようとした、彼の後ろから、ヒュンッという音と共に矢が飛んできて、ガルルを一体打ち倒した。

えっ?と青年が驚いて後ろを向いた瞬間、その隙を狙って別のガルルが彼の喉元目掛けて大きな口を開け飛び上がった。
その気配に気がついた青年がガルルの方を向いた瞬間。

「はっ!」

彼の前に現れた金髪で褐色肌の青年が長剣でガルルを切り伏せた。

「よっと、」

驚いていた青年の前にもう1人、上から青髪の女の子が落ちてきた。その左耳にはきらりと光る石の付いたピアスが揺れていた。

「……ユーゴ!セリア…!」

「ったく、少し目を離すとこれなんだからレオは!」

セリアと呼ばれた少女は赤毛の青年レオにやれやれといった表情を向けた。

「まったくだね」

ユーゴと呼ばれた金髪の青年もセリアの言葉に頷いた。

「でも、僕の目が黒いうちはそう簡単に格好良く死なせてあげないよ、レオ」

「ハンッ、いいとこ持ってきやがって!でもサンキューな2人とも!じゃあ……行くぜえ!」

レオが構えれば、2人も武器を構え、了解!と超えを揃えた。

「よし、ユーゴ、お前はそっちを頼む」

「ああ」

「セリアはあっちな」

「…ちょっとレオ」

セリアはどこか不満そうな声を上げる。

「助けてもらってるはずのあんたが、どうしてそんなに偉そうなわけ?」

「偉そうだって?俺は的確な指示をだな……」

「ほらレオ、正面来てるよ。手を休めないで!危険だと思ったら回避行動だよ!」

「お、おう、任せろ!」

「……まったく、どっちが指示されてるんだか……」



最後の一体ガルグランを倒し終わり、レオは刀を鞘に戻す。

「くく……見たかよ天国のばあちゃん!この絶対絶命からの逆転劇!これこそ、誰より気高き男レオ・フルカードのなせる業!」

「いやそれで言うなら、命懸けで幼馴染を窮地から救い出した僕とセリアの方がよほど気高くないかい?」

「うっ!?」

ユーゴの正論にレオは言葉を詰まらせた。

「さて、また獣が集まって来る前に森を出よう。レオ、行けるかい?」

長剣を収めながらユーゴが問えば、レオは頷いた。

「ああ、問題ないぜ」

「確か、ここから少し先にデュシー村という小さな村があるはずね。休息と補給を兼ねて、一旦そっちに向かいましょうか」

「了解!」

セリアの案に大きく頷いたレオは幼なじみ達と共にアンスワン森林を東へと進んでいくのであった。


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〔道中会話〕


「それにしても、絶対絶命の状況で天国のおばあさんにブツブツすがるレオは正直、気高いというよりカワイかったよね。あの頃みたいでさ」

「そ、そこから見てたのかよ…」

「レオは昔っから、私達がちょっと目を離すと死にかけるんだから」

「おいおい、そんな人を乳幼児みたいに…」

「いや、喜び勇んで危機に飛び込む分、乳幼児よりタチが悪いよ」

「ぐ……お、俺だって別に好きでピンチに陥ってるわけじゃねえさ。ただ今回はちょっとした人助けで……」

「…今回"は"?」

「はいはい、すいませんでしたー」

「はあ、ま、いいけどね。今に始まったことでもないし」

「さすが、持つべきものは理解ある幼馴染だな!頼りにしてるぜ二人とも!」

「まったく調子いいんだから」



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〔道中会話〕


「あー、やっぱり森林浴って気持ちいいよなー」

「なに、悠長なこと言ってるのよ」

「まあ僕達シルヴェーアの人間は森と共に生きていたからね。レオの気持はよくわかるよ」

「そりゃあ私だってそうだけど……」

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〔道中会話〕アンスワン森林→キトルール草原


「そろそろ森を抜けそうだね」

「この草原の先に村があるのか?」

「そのはずよ」

「それで、今回はどうしてああなったわけ?」

「ああ、なんか、真っ青な顔した行商人ににーちゃんが、大量の獣に追いかけられてる場面に出くわしてさ」

「反射的に助けに入ったと?とてもレオらしい話だけど……肝心の助けたその人は」

「ああ。当然もう逃がしたぜ?俺が身代わりに獣を引きつけている隙にな」

「…レオ。それ、見知らずの人だったんだよね?」

「ん?ああ」

「えーと、レオ。この件に対する報酬はもらった?相手の連絡先は?いえ、せめて、お礼くらい言われたわけ?」

「ははっ、馬鹿だなセリアは。んなヒマあるわけねぇだろ。普通に考えろよ。ま、報酬って話だったら、俺の"気高さ"が上がったことが、なによりの報酬だな!」

「…はあ」

「な、なんだよ、お前ら。その生ぬるい視線は」

「いや別に。これは……まだまだ目が離せそうにないですねぇ、セリアお母さんや」

「ええせめて、育児ノイローゼにはならないようにお互い気をつけましょうねえユーゴお父さんやな」

「お、お前らなー!」


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〔道中会話〕オタオタ、オタグリの大群遭遇

「うわ!なんだよこれ?」

「オタオタがこんなにいっぱい…」

「全部相手してたらキリがないぞ?」

「でも、ここを見過ごしたら、いずれ村の方にと被害が出るかもしれない。危険な芽を摘んでおこう」

「まあそうだよな。…じゃあ、やるぞ!」

「もうやってるわよ!」


〔戦闘中会話〕
「なあセリア、これで何体倒したっけ?」

「そんなの数えてるわけないでしょ?」


〔戦闘後〕
「もう大丈夫……よね?」

「ああ先に進もう」

「なんであんなに出てきたのかな?」

「まあ今日は天気が良いからな。こんな晴れた日には、オタオタだって外に出たいだろ」

「そんな理由じゃないと思うけど……」
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