エピソードまとめ
□レオ・フルカード
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ep.2 気高き者
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「あはっ♪」
弓を構えながらラプラスは笑う。
「でも、こんなに強そうな子達、相手にしたらお姉さんやられちゃうかもお♪」
そう言ってラプラスは魔弾の矢を撃ち込んで来る。
「相変わらずふざけた人……!」
「けど、実力は本物だ」
「ああ。赤狼将の名は伊達じゃねえな」
ラプラスの狙撃を避けながら、三人は他の帝国兵達の相手をしていく。
他の帝国兵は有象無象だったので簡単に倒せるのだが、ラプラスだけは赤狼将の名に恥じぬ強さで苦戦していた。
「キミ達、中々イイわよお?でも、ごめんねえ。今ちょっと忙しいのよお。なにせえ……、この唯一無二の爆破ポイントにい、もう少し地爆石、運び込まないとお、一帯を巻き込むほどの"不幸な事故"が起こせなくてえ。せいぜい、廃坑崩落程度で終わっちゃうんだもの」
「貴女、やっぱり崖崩れを……」
怒るセリアの前で、レオがニヤっと笑った。
「……へえ、そりゃいいこと聞いた」
「レオ?」
どうしたんだ、とユーゴがレオを見つめるが、魔弾の矢が飛んできて疑問どころではなくなった。
「こんな奴らと戦ってられるか!」
エンブリオ持ちの強さにビビり、帝国兵の1人が走って逃げて行く。
「ったく、逃げ足だけは1人前ね……」
呆れてラプラスが去っていくその背を眺める。
それを見てレオは今がチャンスだと大声を張った。
「セリア、ユーゴ。……俺達も走るぞ」
そう言ってレオはポケットから小型の発火装置を取り出した。
手のひらに収まるそれは角のボタンをポチっも押すと先端に火がついた。
「レオ、それって……」
「発火装置のリアクター?」
「準備はいいかあ、二人とも!」
そう言ってレオは大きく振りかぶった。
「え、ちょ、まだ……」
「ほら、帝国さんよお!落し物、返すぜえ!」
火のついたそれを、レオは積まれた地爆石の方へ放り投げた。
それにはラプラスも驚愕し、むろん、セリアとユーゴも唖然としながら駆け出した。
「まだって、言ってんでしょうがあ!」
四人は慌てて、燃え広がり爆発していく採石場から脱兎のごとく逃げ出した。
「ぜえ、ぜえ…………」
爆発の土砂で採石場が埋まり、どうにか逃げきれた四人は、土埃の舞う中、肩で息をした。
「あ、危なかった……」
「誰のせいよ、誰の!」
額の汗を拭うレオに、セリアは目をかっぴらいて怒鳴りつけた。
「でも、これで、爆破地点だった廃坑が埋まったね」
「……つまり?」
「もう意図的に、崖崩れを起こすことはできない」
「あーあ、台無しよお。まったく……」
「俺の気高い活躍で、作戦が潰れて残念だったな!」
「そうねえ。……でも、アテが外れたのは本当にアタシ達、帝国だけだったのかしら?」
「それ、どういう…………」
ラプラスの言葉にセリアは眉を顰める。
「さーねえ?腹いせに、皆殺しにしてあげてもいいけどお、帰って甘いもの食べたいし、またねえ♪」
ラプラスは踵を返してヒラヒラと手を振り去っていく。
その後ろ姿をレオはじっと見つめる。
「レーオー?」
セリアがレオのそばに寄って見上げる。
「なに、あの女のお尻見つめてんのよ……」
ジト目でセリアがそう言うと、レオは慌てた。
「ば、ち、違えよ!俺はただ、なんか…………アイツの姿が、いつも、頭の隅に引っかかるっつうか」
「……えっち」
「だから、そういうんじゃねえんだって!なあ、ユー……」
ユーゴに助けを求めようと振り返ると、彼は顎に手を置いて、じっと考え混んでいた。
「……赤狼将の最期の言葉。……もし、帝国兵が大挙して砦を奪還しに来ていたとしたら、その時、連邦がしようとしたのは帝国と同じで…………」
ポワトゥー駐屯地になぞに置かれていた大量の地爆石の事。制圧したばかりなのにやけに兵が少ないバイヌセット砦……二つのを考え導き出した答えはそれだった。
「よくわかんねえけどさ、よかったよな」
「……え?」
「だってさ、これでもう"誰も"崖崩れは起こせねえぜ」
「……レオ、まさかキミは全部わかってて……!」
驚くユーゴに、レオはポカンとした。
「は?なんの話だ?」
「違う……のか?」
「お、おう?よくわかんねえけどさ。早く村に戻ろうぜ。カールに報告して安心させてやらねえと!」
「ええ、そうね」
レオとセリアはそう言って歩き出した。
その背中を立ち止まったままユーゴは見つめる。
「ただ、真っ直ぐに正義を貫く……。それが、キミの"気高さ"か。かなわないなあ。ホント」
そう言ってユーゴは、二人の後を追うのだった。