エピソードまとめ
□アナマリア・マルシュナー
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ep.2 お嬢様の小さな冒険
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五叉路の風車の前にガルルドゥークは居た、
「追いつきましたわ!」
「やっと諦めたか。そんじゃ、大人しくその子どもを……」
アオーンとガルルドゥークは鳴いて仲間を呼び寄せた。
「ゲッ!またかい……」
「……だがもう、逃げる体力は残ってないようだな」
「では丸ごと仕留めましょう!すでに汚名を返上したわたくしにかかれば、この程度夕飯前ですわ!」
「それを言うなら、朝飯前だろ」
「時間的には夕飯前ですわ!」
「そうだな。日が暮れる前に、片して帰るぞ!」
そう言って3人は、現れたガルルとガルグランを切り裂いて行った。
「やっとコイツとやりあえるな」
ガルルとガルグランがやられた事で今まで休んでいたガルルドゥークは攻撃を仕掛けてきた。
「随分追いかけっこさせられたねえ」
「ここで会ったが百年目!覚悟ですわ!」
「油断するなよ。手負いの獣が一番危険だ」
「そうだねえ。根性張ってここまで来た奴だ。一筋縄ではいかないだろう」
「覚悟の上ですわ!森に踏み入ったのは、申し訳ないと思いますが……男の子は返してもらいます!」
そう言って3人はガルルドゥークと対峙するのだった。
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「あんたこんな時間までどこ行ってたの!」
獣を倒し、ルディロームの街に帰って来ると、子供の姿を見た母親が駆け寄ってきて、子供を叱った。
「街の外に出てしまっていましたわ」
男の子はアナマリアの後ろに隠れる。
「危うく獣に、食べられちゃうところでしたの」
「な……なんてことを……!」
母親が悲鳴に近い声を上げると、男の子はびくりと震えた。
そんな男の子の傍にしゃがんで、エドはその頭にぽんと手を置いた。
「……帰れる家があって、心配してくれる家族がいる。それはとてつもなく贅沢で幸せなことなんだぞ?」
言い聞かせるようにエドはそう言った。
「……まだボウズには難しいか。とにかく、悪いことしたならやることがあるだろ?」
エドがそう言えば、うん、と男の子は頷き母親の方を向いた。
「……ごめんなさい」
男の子は頭を下げて、母親の傍に寄った。
「この度は、ありがとうございました」
母親は息子の手を引いて、アナマリア達に礼を言った。
「なにかお礼を……」
「だったら報酬をもらおうか」
「エド!?」
驚いてアナマリアはエドを見上げた。
「タダ働きはごめんなんでな」
「そんな言い方しなくても、いいではありませんか!」
「子ども一人の命を救ったんだ。150万ガルドでどうだ?」
エドの言い分に、アナマリアもラウルも目を丸くした。
「お、おいおい……」
「ちょうど、あそこに同じ値段の果物が売ってるらしい」
そう言ってエドは、昼間マーケットエリアで、リンゴ1つ150万ガルドと冗談を言っていた青果店を見た。
「それで手を打とうじゃないか」
その言葉にアナマリアは、ぱあっと表情を明るくした。
「名案ですわ!」
そう言ってアナマリアは指を立てるのだった。
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〔エピローグ〕
バイバイと母親の手に引かれ去っていく男の子を見送って、貰ったリンゴをアナマリアは嬉しそうに見つめた。
「あんだけ頑張って、果物一個か……悲しいねえ」
そう言ってラウルは橋の手摺にもたれる。
「そんなこと言わないで下さいまし!」
むっ、とアナマリアが怒ってラウルを睨む。
「あの子の命が救えたことが、なによりの報酬ですわ!」
「純真だねえ。世の中綺麗ごとだけじゃ、やってけないこともいっぱいあるよ?」
「そうだな。今回の場合ちゃんと謝礼金を受け取るのが正しい。適正な報酬をもらっておけば双方にとって後腐れないだろう?」
「……でもエドはこれだけしか受け取りませんでしたわ」
そう言ってアナマリアはリンゴを掲げて見せた。
「……依頼を受けてたわけじゃないからな」
「ふふ。エドは見かけによらず、紳士で優しいんですのね」
笑うアナマリアを見て、エドは不機嫌そうに目をそらす。
「……そう思うなら勝手に思ってろ」
「そうすることにしますわ」
そう言って、アナマリアは手に持ったリンゴに齧り付いた。
「勝利の味ですわー」
彼女の嬉しそうな声が、赤く染り緑のマナの周りを川が掛ける空に響くのだった。
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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード アナマリア
ep.3 湯煙温泉誘拐事件!
しっぽりがっぽり大事件ですわ!