エピソードまとめ

□ガスパル・エルベ
8ページ/8ページ

ep.1 国家の犬
─────────♢────────


「やっとここまで来たか……」

キャサリンちゃんを倒した辺りまで戻ってきた。

「"行きはよいよい帰りは怖い"ってね。ここを抜けたらこの任務も終わりか……。……はあ。ホント長えおつとめだったぜ」

そう言って東門の方へ向かった。
すると、門は轟轟と燃えていてとても通れる様子ではなかった。

「……火を放つなんて相変わらずガサツだなあ。これじゃ後続部隊も困るんじゃ……。……あーなるほど。自分達だけでやるつもりか。リゼット……変わんないなお前は。……さて仕方ない。こうなったら西門目指しますか」


そう言ってガスパルは行きしに使った西門の方へ向かう。

「この任務が終わったらなにをするかな。ひとまず近くで美味いものでも…………と、やべえやべえ。こういうこと言う奴から、死ぬんだよなあ、この仕事」

西門に着くとやっぱり兵士がいた。

「ん?お前はパン屋の……?」

「どうも。いやはや大変なことに、なってしまいましたね。いやあ、恐ろしい恐ろしい。じゃあ自分はこれで。今後ともライザーベーカリーをごひいきに……」

「……その武器はなんだ。入った時にはなかったはずだが」

「あー……その拾いまして」

「拾った……?」

「そうそう。だから早速護身用として……」

「……連邦の犬め!逃がすな、殺せ!」

「ですよねー」

「貴様……連邦のスパイだったのか。となるとあのパン屋も……!?」

「……ああ、あのマヌケなお人好しのことか。ははっ、パン屋も村の奴らも騙されただけに決まってるだろ?すべては超有能なスパイたる、この俺だけの大手柄さ」

「よくもぬけぬけと……ここは絶対に通さないぞ!」

「いいや、通してもらうぜ。最初に会った時のようにな」


ぞろぞろと集まり兵達をガスパルはバンバンと撃ち抜いていく。

「くそっ……!やめろ……やめるんだ!ここは絶対に……通すわけには…………。お前を……通したとバレたら……、俺の名誉に…傷がつく……!」

「………この状況で出てくる言葉がそれかい。名誉どころか居場所さえもアンタにはなくなるってのに……」



ガスパルは最後の1人の頭を撃ち抜いた。

「全部片付いたな。任務完了だ」


そう言って、難なく西門を出てジナーホルツ村の方へと向かって歩く。

「……パスト、聞こえるか?」

ガスパルは耳に手を当て、連絡を取る。

「生き延びたか。では帰還しろ」

「よくやったの一言ぐらい、ないもんですかね?」

「ないな。特に村人との交流には実に無駄が多かった」

「無駄……ですか。連邦の犬として頑張ったつもりですけどね?」

「いや無駄だ。そしてその結果が……"それ"だ」

「それ?」


首を傾げながら、ガスパルは村の門を開いた。

「村が連邦に押さえられたのは、てめえのせいか!」

「あんた俺達を騙していたのか?」

村に入るなりそうかけ投げられ、パストの言っていたのはこれか、と理解した。

「どうしてこんなことを………」

畜産家の女性が、

「職探しなんて嘘だったんだね」

子連れの奥さんが、

「あなたはパンカーじゃない……ただのフェイカーよ……!」

レシピをくれたパンカーが、

「おい……嘘だって言ってくれよ……。なあ……」

ライザーに口利きしてくれたおじさんが、

「おじさんは"卑怯者のガスパル"だよ」

カールの友達の女の子が、

「あんた人の顔にどれだけ泥を塗ったかわかってるのか!?」

農家の若者が、

「連邦の犬め……!村に入れるべきじゃなかった……!」

家に泊めてやると言っていた老人が……。


連邦兵達が彼に敬礼し頭をさげる中、村の皆がガスパルを非難した。
何食わぬ顔でガスパルは村を歩き、パン屋の前へと辿り着いた。

「ガスパルさん……連邦の犬ってなに……?」

カールにそう訊ねられた。

「……よお、カール。少しは親父さんとゆっくり命日を過ごせたか?」

「う、うん」

「そいつあ、良かった」

「あ、あの!本当にガスパルさんは……!」

「なあ、ガスパルさんよ。俺達はこれからどうなる?」

「……別に、どうということもない。税の納め先が変わる程度ですよ」

「村には住めるのか?」

「ええ。村に連邦兵が居るのは、あくまで一時的です。帝国兵が潜んでるかもしれませんからね。砦の制圧と並行して村の調査が行われるだけで、調査が終わったら戻れます」

「そうか。じゃあ、もう一つ質問だ。俺達は…………テメエのその薄汚ねえツラ、いつまで見ればいい?」










「これでもお前は自分が"よくやった"と思うか?」

耳元でパストがそう尋ねる。

「……悔しいけど、あんたの言う通りだな。さすがの俺も深手だ、こりゃ」

村から外れたガスパルはそう答えた。

「……なぜ、言わなかった?」

「なんの話だ?」

「お前も知っていたはずだ。本来ならば、明日あの村は……砦の帝国兵により、蹂躙されるはずだった」

「ああ……そのことか」

そう呟いて、ガスパルは数日前のことを思い出す。

────────────────────

「しかし、あのパン屋も不憫だな」

「え、なにがですか?」

「お前、知らないのか?実は近々な……あの村を潰して、新たな軍事拠点にするんだと」

「マジですか、それじゃあ……あのパン屋、村を潰す俺達のため、せっせとパン運んでんスか?」

「ああ……傑作だろ?」


────────────────────

「そんなの言っても無意味だろ。無駄なショックを与えて生産性を下げても仕方ない」

「ふむ、その判断は評価に値するな。……ガスパル。"よくやった"」

「……どうも」

そう言って通信を切る。

「……へへっ、配送のパン、一つくすねといたんだよな」

そう言って、ガスパルはポケットから白いパンを一つ取り出し齧った。

「……かあ、やっぱ美味えなあ。ライザーベーカリーのパンは!帝国一と思っていたのだけは本当だったんだけどなあ……」

────────────────────

〔エピローグ〕

「しっかし、あの少将。よくここまで調べたな」

荒野を歩くガスパルは回収した資料をめくる。

「無能そうだけど、案外できるヤツだったのか?それとも、背後に誰かいたか……。なんにせよ、これは確かに、値千金の調査資料だよ。帝国どころか連邦にとっても。しかし世界は狭いっつーか、因果なものだよなあ。そう、この……」


ガスパルはピタリと足を止める。

「ル・サント村の惨劇に、関する調査報告……つまりは、レオくん達の故郷が滅んだ理由のすべてを」


────────────────────

〔次回予告〕
次回 テイルズオブルミナリア
エピソード ガスパル

ep.2 信頼の証明

次はもうちょっと楽な任務にならないかねえ
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ