エピソードまとめ

□ラプラス
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ep.1 魔女の気まぐれ
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洞窟の最奥に到着すると、道中の岩の間から出ていたマナの吹き溜まりよりも、もっと大きく広範囲で大量のマナが吹き出していた。


「げはっ!か……ひい……ひい……」

虫の息のような声が聞こえ、ラプラスは下に視線を落とす。

「……なにあれ」

「ふむ。例の逃げ遅れた鉱夫のようだな」

「ふ〜ん……」

「…助けるか?」

「あは、冗談。どう見たって助からないわよ、あの怪我じゃ」

「そうだな」

「俺が……俺が、父さんの跡を継がなきゃ……!」

鉱夫はうつ伏せでずりずりと這い寄ってくる。
その背後に、ドシンと大型の獣─ディモルベラが落ちてきた。二足歩行でヤギのような角の生えた頭を持ち、背には長いっぽと大きな翼が生えている。右手には大きな斧のような武器を持っていることから知能の高い獣と言えよう。

「……でも、ま、どうせ。あの獣を倒さないと原石回収できないしー、あいつが殺されるまで待つ義理もないわよねえ?」

「ふ……そうだな」

「なによお?」

「いいや。では……やるか」

「ええ。最悪にだるいけどねっ!」

そう言って2人は武器を構えた。

「あらあら、鼻息荒くしちゃって濃厚なマナをいっぱい浴びて興奮してるのね」

「こいつがここの主か?」

「たぶんね」

「ではこいつを倒せば採掘がしやすくなるな」

「ええ。アタシ達が洞窟を壊さなきゃだけどね♪」









ラプラスのトドメの一矢を受けて、ディモルベラの大きな身体がマナに還って行く。

「……片付いたわね」

ラプラスは武器をしまいながら、前方に見えたものに目を凝らした。

「ん、あれは…」

地面に転がっていた赤黒い石にラプラスは近づいて手を伸ばした。

「よしよし、回収完了っと」

そう言ってラプラスが手に取った石は、宝石と言うにはあまりにもどす黒い。ただ、その中心は滾る炎のように赤く輝いていた。


「じゃ、帰りましょうか」

「ま、待って……!」

踵を返そうとしたラプラスに掠れた声で鉱夫が声をかけた。

「お願いだ……助けてくれ……」

「え、いやよ。アタシにそんな義理ないし」

そう言ってラプラスは鉱夫の顔を覗き見るようにしゃがんだ。

「それに、なにしても無意味なの。時間の無駄」

「どうして……」

「あは。とぼけちゃってえ。自分でも気づいてるんでしょ?……あなた死ぬのよ。だからバイバイ」

ラプラスは鉱夫の眼前でヒラヒラとてを振った。

「い、嫌だ……死にたくない……!う、うう……」

「ねえ、なに泣いてんの?それしかすることないわけ?」

「黙れ悪魔!俺は……俺は……」

「死ぬわね。だから疑問なの。貴重な最期の時間の過ごし方が、"それ"でいいのかしらって。ま、アタシには関係ないから、そこで勝手に死んでねえ」

「ま、待ってくれ……こ、これを………」

鉱夫はラプラスに向けて手を伸ばした。その手のひらには、赤い小さな石の付いたリングがあった。

「……代々、うちの当主が受け継ぐ大事な指輪なんだ」

「これを……親父に渡して欲しい」

「えーなに、この薄汚い指輪。触りたくないんですけどー」

「頼む……俺の代わりに家を継ぐであろう弟のためにも!」

「ふ〜ん……次の代のために……ね」

ラプラスは、鉱夫の手の上から指輪をつまみ上げた。

「ありが……と……う……」

鉱夫そう言って静かに事切れた。

「触れたくなかったのでは?」

「そうねえ。ま、でも、二束三文にはなるでしょ」

「そうか」

「なによ」

「いや、他意は無い」

「……ふん。さ、目的も達成したし帰りましょ、バスチアンちゃん」

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〔エピローグ〕

2人は洞窟を出て来た道を戻った。
落石で塞がれて、まわり道をしなければならなかった本来の入口の付近まで戻ると目の前に杖を付いた老人が現れた。

「む、息子は!?息子は無事でしたか!?」

あー……とラプラスは顎に手を置いて考える。

「あなたの家って他に子ども、いるのよね?」

「じ、次男がおるが……?」

「なら、良かったわ。はい、これ」

つまんだ指輪を老人の手に返す。

「これ……は……」

「死んだわよ、それの持ち主」

「あ……あああああ……!」

老人はその場に泣き崩れた。

「なに泣いてんの?跡目の"代替"はいるんでしょ?」

「な、なんじゃと……この悪魔め!お前のせいで……!」

「ご老人。それは違……」

バスチアンが否定しようとしたら、ラプラスが、あははっ、と高笑いを上げた。

「そうねえ!確かに楽しませてもらったわよ。あなたの大事な長男の死にざま!」

そう吐き捨ててラプラスは歩き出して行った。
バスチアンもその後に続く。


「ラプラス。……まったく、貴女という人は」

「なによ。アタシはいつだってこうでしょ?アタシはアタシの愉悦が全てなの」

「そうか……。ではなぜ指輪を渡した?二束三文で売るのではなかったか?」

「……気まぐれよ」

「気まぐれか……。……それでも貴女の行いはあの一族の"継承"の一助になったであろう」

「知らないわよ、そんなこと。くだらない」

そう言ってラプラスは一瞬足を止めた。

「……"継承"なんて、結局は、する側の自己満足よ」

そう言ってラプラスは再び歩き出す。

「される側のことなんて……。でも、それももう終わり」

ラプラスは左手に取ってきた原石を握る。


今度こそ、アタシは……この手で……!

そう、ラプラスは強く、強く、赤い炎が滾るような石を握りしめるのであった。


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〔次回予告〕
次回 テイルズオブルミナリア
エピソード ラプラス

ep.2 縛られた生命(いのち)

アイツと一緒の任務なんて、最悪なんですけどお
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