エピソードまとめ
□ラプラス
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ep.1 魔女の気まぐれ
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帝都ハイガルデン。その城下をやけに露出度の高い服を来た女が腰を揺らしながら歩いていた。
「陛下のお気に入りとはいえ、あんな得体の知れない女が城内を闊歩するだなんて……」
ひそひそ、とドレスを着た女性が2人話をしていた。
「そうそう、奥様は"あの噂"ご存じ?……あの女、何十年も前からこの城に出入りしているって」
「ええ。それもずっとあの若さのままででしょう?なんと恐ろしくて汚らわしい悪魔なんでしょう………」
「あらあら、ご婦人方、随分楽しそうですわねえ?」
ひいっ、と2人は真後ろに現れた女を見て悲鳴を上げた。
「アタシも混ぜて下さらない?」
女は胸に手を当て微笑んでみせた。
「い、いえ、大した話ではございませんので」
「そうなの?残念。アタシ、お二人にとっておきの話があったのに」
「それはいったい……」
「あはあ、興味あるう?実はね、二人にはとっても関心しているの」
「それはまた、どうして……」
「だってえ……」
女は紫の長い爪の生えた指を顎に添えた。
「お互いのご主人の浮気相手とよく仲良く出来るなあって♪」
えっ、と女性2人は顔を見合わせた。
「あっ、もしかして知らなかったあ?ごめんなさいねえ」
わざとらしく女は目を見開き、大きく開いた口を手で隠す。
「お詫びにこれだけ置いていくわあ」
2つの短剣を懐から取り出して、女はそれを下に落とした。
「じゃ、またね〜」
バイバイと手を振って女は立ち去っていく。
「きゃーっ」
「ど、どうされました!?お二人とも落ち着いて!」
彼女後ろで悲鳴が上がり兵士が駆け寄っていく。
それを離れた所で見ていた兵の1人が、女を睨んだ。
「魔女め……!」
「あはあ。今日も愉しい一日になりそう♪」
笑みを浮かべ女は一人街を歩くのであった。
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【CHAPTER1 魔女の日常】
997Y.C. ジルドラ帝国 帝都ハイガルデン
「さあて、つい遊んじゃったけど、今日はちょっとだけ大事な予定があるのよねえ。せっかくだから誰かに手伝ってもらいたいわ」
そう呟いて女は街を歩く。
「帝都ハイガルデンへようこそ!……ってラプラス様でしたか」
街に在中している兵がそう声をかけ慌てて頭を下げた。
「いやあ、この国はホントに凄いですよね。源獣ラズィのマナを吸い上げて、リアクター技術にするなんて。いったい誰が考えたんでしょうか?」
「あ、ごめん。聞いてなかったわ。そういうのは訪問客とやってね」
そう言って女──ラプラスは街の奥へと進んだ。
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〔帝都内会話 噴水前少女〕
「いいなー。帝都をぐるっと一周できる列車かあ。何周見ても飽きないけど、いつかはあそこからの景色も一望してみたいなあ」
〔帝都内会話 噴水周辺老人〕
「荒涼とした土地であるジルドラも、ラズィのマナから作り出したリアクターのおかげで、ここまでの発展を遂げたのじゃ。そのマナが枯渇したらどうなるか……なんてことは生きてる内には関係なさそうじゃな」
「生きてる内は……ね」
〔帝都内会話 ロープを着た帝都兵〕
「ラプラス様!帝都をお散歩ですか?」
「ま、そんなとこね。ねえ、あなた。アタシに付き合わない?」
「ぼ、僕がラブラス様と!?ぜ、是非……!」
「ちょっとした宝探しみたいなものなんだけど……」
「それなら僕はもう見つけました……」
「え?」
「そうです!あなたは僕の宝物です!来る日も来る日もラプラス様のことを思って……」
「……話にならないわね」
〔帝都内会話 帝国兵〕
「これは赤狼将様!お疲れさまです!」
「あら、元気でいいわねえ。たくましい筋肉も素敵い」
「ありがとうございます!それなりに鍛えていますので!」
「ふうん?ねえ……じゃあ、アタシと一緒に……シない?」
「な、なにをでしょう?」
「ほら……洞窟の奥をコツコツって……」
「コツコツ……ですか……」
「そうそれで出しちゃうの。……厄介で獰猛な獣達の群れを。それでそれでえ、もしもの時は、アタシの盾になって死んでえ?」
「そ、そこまでハードなのはちょっと……」
「あっそ、つまんない男ね」
〔帝都内会話 男の子〕
「ぼく……この前からすごくドキドキしてるんだ。この気持ちってなんなんだろう」
「あらあ、お年頃なのね。それはもう恋なんじゃない?」
「そうなのかな……。この間レストランで、お店のごはん全部食べちゃう、白い鎧の女の人見てから、ずっとドキドキしてるんだ……」
「あー……ごめん。それはたぶん……戦慄ってやつね」
〔帝都内会話 青年〕
「巨大な源獣狼ラズィ……それを従える帝城ガルデンブルク……。いつ見ても圧倒されるな……。俺もいつか帝国兵になって、あの場所で……赤狼将様の元で……あんなことやこんなことを……」
〔帝都内会話 子連れの女性〕※グラマラスコーディアル
「ねえねえ。今ヒマしてる屈強な男とか知らな〜い?」
「あ、えと、すみません。ちょっと思い当たらず……」
「あん。もういっそ、ただの話し相手でもいいんだけど」
「そういうことであれば私が……と言いたいところですが、今日は娘に料理を教える約束をしておりまして……」
「ふーん。母親の味を伝授ってやつ?」
「はい……。もし良ければラプラス様にもレシピを……」
「いらないわよ。他人の家庭料理なんて」
「で、ですよね。では私が夫と出会った頃に飲んでいた、特製ドリンクのレシピを差し上げましょうか?私はこれの力で夫を落としたと言っても過言ではありません」
「あはあ。それは面白そうね。じゃ、そっちはもらっておくわ」
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頂狼ラズィが近くで見れる広場まで出ると、幾人かの帝国兵がそこにいた。
「おい待て、そこの魔女!」
「え?魔女ってアタシい?」
「他に誰がいるってんだ?探したぜ、ラプラスさんよ」
「あら、情熱的な目。でもごめんね、ボク。アタシこれから野暮用があってえ」
「っせえ!お前のせいで俺の……俺達の人生は台なしだ!かかれえええ!」
1人の男がそう叫び、他の男たちもリアクターの付いた剣や槍を持ちラプラスに襲いかかる。
「あらあ?こんなに大勢の男とだなんて、アタシい困るわあ」
そんな風に呑気に言いながら、ひらりひらりとラプラスは攻撃を避けていく。
「忘れたとは言わせねえぞ!お前の気まぐれで俺達は軍を追われて……!」
「あなた達は確か………えっと〜どちら様?」
「とぼけやがって!」
「ごめんねえ。アタシって忘れっぽいのよね。あんまり"過去"に囚われたくないっていうか〜。とりあえず先に手を出したのは、あなた達だから、皆殺しにしても正当防衛よね♪」
そう言ってラプラスは弓を構えた。
「な、舐めやがって!」
そう言ってやってくる兵を足払いし、ラプラスは弓矢を引くのだった。
「……相変わらずだな、貴女は」
転がった死体の中に立つラプラスの元に黒い鎧の男が現れた。
「あら、バスチアンちゃん。なに、覗き見?えっちなんだからあ、もう」
そう言ってラプラスは胸を隠すように腕を前に持っていき、身を捩った。
「む……。不快にさせたならすまない」
「……相変わらず、からかいがいのない子ね。あ、そうそう、悪いけど。アタシの用事にちょっと付き合ってくれる?」
「承知した」
「…こっちが不安になるほど即決ねえ」
「自分にとって貴女からの頼み事は、極めて優先度が高いのでな」
バスチアンの言葉にラプラスは面食らう。
「そ、そう」
「どうかしたか?」
「なんでもないわ。行くわよバスチアンちゃん」
そう言ってラプラスは歩き出した。
「お姉さんと甘美なデートの旅へ」
「デート?任務ではなくか?そうなると自分以外に適任が………」
「ああ、もう!いいから行くわよ!」
「む……善処しよう」
そう言って2人は赤いマナの川が翔ける空の下、街の外へと向かうのだった。