エピソードまとめ
□バスチアン・フォルジュ
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ep.1 強者
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本陣へと到着すると、囲まれた塀の中に党が建ててあり、その上にデムランが待っていた。
「これはこれは……黒狼将殿」
「デムラン……。……これが貴様の最後の策か」
塔の下に控えていた無数の兵士達は、それぞれリアクターを手にしていた。
「ええ、そうですよ。壮観でしょう?リアクターの扱いに慣れた兵士達に、これだけの弓兵。そして何より、攻城兵器でもなければ破壊不能なバリケード!すべては貴方のために用意したものです!」
「……なるほど。ならば今日は貴様を仕留められそうだ」
「ふ、減らず口を。では、ショータイムです」
そう言ってデムランは塔の上からリアクター銃を放った。
バスチアンはそれを軽々と避け、周りを囲む兵士達に刀を振るのであった。
「ふふ……。下手をすると私が討つ前に死んでしまうのではないかと、ハラハラしましたが……。よくぞここまで辿り着いてくれましたねえ。本日は貴方のために用意したこの宴。存分に楽しんでいって下さいよ!」
高みの見物と言うわけか、そう言ってデムランはそれ以上撃っては来なかった。
「相変わらずよく回る舌だ。すぐにでも引き抜いてやろう」
バスチアンは刀を振り、切り伏せ、力を使って数多い兵達を吹き飛ばしていく。
「な…馬鹿な。この数をも凌ぐというのですか?これでは化け物どころじゃない。戦神そのものじゃないですか!」
「どうした。次の策はもういいのか?」
下にいた兵達をすべて倒し終わったバスチアンが上を見上げる。
「く……確かにここで、貴方を討つのは無理のようですね。しかし、それは貴方側からも同じこと!」
「……そのバリケードのことか」
「ええ!」
「アウグストが言うにはな」
「は?なんです?」
デムランは耳に手を当てて、聞こえないとポーズを取った。
「……自分が知る最も狡猾な人間が言うにはな」
少し声を大きくしながらバスチアンは塔に歩み寄る。
「あいつが戦場で最も苦手するもの。それは……戦術や戦略を踏みにじる"災害"らしい」
「いったいなにをごちゃごちゃと………」
「災害」
バスチアンは左手に持つ鞘をカチャと少し持ち上げた。
「それは言い換えるならば……」
右の手で剣の柄を掴む。
「……人知の及ばざる」
バスチアンは腰を曲げ姿勢を低くした。
「圧倒的な"力"のことだろう?」
そう言ってバスチアンは瞬きをすると共に抜刀とした。
シャキン、という音と共に、塔に斜めの切り口ができた。
ずりずりと塔の上の方が傾斜を滑り落ちた。
「なああああああああ!?」
塔が下に落ち、一番上にいたデムランも放り落とされた。
「さて……決着をつけるとしようか、デムラン」
バスチアは倒れた状態から起き上がろうとしていたデムランの顔前に刀の先を向けた。
「く、来るな……化け物めえええええ!」
そう言ってデムランは後退りする。
「貴様が一人で自分の相手をすると?」
「す、すみませんでした!この通り、命だけは…!」
デムランはすぐ様土下座をした。
「家族がいるんです……、お、お、お助けを……!」
「ふむ。無能な将をあえて逃がすのも一つの戦略ではあるか」
そう言ってバスチアンは刀をしまい背を向ける。
「そ、そうです、そうです!では…!お人好しの愚将は死ねえええええ!」
そう言って銃を構え顔を上げたデムランの鼻の先に刀を先があった。
「……度しがたい!」
〔VSデムラン〕
「兵達の後ろでこそこそ隠れていただけの風に、いったいなにができると言うのだ?」
「ふふふ、あまり侮らないで下い実力もなしに強盗団の長が務まると?ましてや今では連邦の将です然腕に覚えはありますよ……!手負いの狼を狩れる程度にはね!さあ!窮鼠、狼を喰いちぎるといたしましょうか!」
「ならば自分も……全力で参る!」
キンっ、とバスチアンの刀が、デムランを鎧ごと斬り伏せた。
「がは……」
バスチアンの背で、デムランが前のめりに倒れる。
「……終わったな」
そんな彼の更に背後から足音が聞こえた。
「あらあ、もう終わっちゃったの?」
「ラプラスか、どうした」
「どうしたもなにも、アウグストちゃんに言われて増援に来たんだけど……」
そう言ったラプラスの視線は地に転がるデムランに向いた。
「……必要なかったみたいね」
「ああ」
「まったく、馬鹿みたいな力しちゃって。侵略だろうが救国だろうが、貴方一人で、もうなんでも出来ちゃうんじゃないの?」
「買い被りだ。……力だけでは成せぬことの方が、この世界には遥かに多い」
そう言って、バスチアンは空をかける緑色のマナの川を見上げたのだった。
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〔エピローグ〕
髷を結い、着物を来た少年が左手に刀の鞘を持ち、荒くなる息も気にせず、ひた走っていた。
「ふーん、力で出来ないことなんてあるのかしら?」
「ああ。感情を犠牲に強大な力を手にしながら……」
記憶の中の少年は喜んだ表情のまま、急に足を止めた。
「……大事な故郷の救援に間に合わなかった、愚かな道化が言うのだ。間違いないだろう……」
少年の表情は、喜びから絶望へと変わっていった。その瞳に映ったのは……朱殷だった。
燃え盛る炎の絵。
額縁に入れられたそれを、真ん中に椅子一つ置かれた部屋で、バスチアンは見つめていた。
「……また、死に損なったか」
目を瞑る彼の元に、コンコンコンと扉を叩く音が響いた。
「……バスチアン様。任務のお時間です」
「ああ……今、行く」
そう返事をして、バスチアンは椅子から立ち上がった。
「……では今日もまた戦場で、この"力"を振るうとしようか」
バスチアンは鞘を握った左手を見つめた。
「……命を賭して」
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〔次回予告〕
次回 テイルズオブルミナリア
エピソード バスチアン
ep.2 一条の光
自分に同行者など不要。
そう、思っていたのだがな。