エピソードまとめ
□アレクサンドラ・フォン・ゾンネ
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ep.2 正義の免罪符
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「止まれ!」
「くそっ!追いつかれたか……!」
ルートヴィッヒはすぐさま笛を吹いて攻撃を仕掛けてきた。
「恵まれない者が幸福に手を伸ばしてなにが悪い!」
「……ならば聞くが、お前には子ども達を食い物にする権利があると?」
「僕はただ子ども達を光に導いてやってるだけだ」
「光だと?」
「ああ。あてもなく暗い路地を彷徨う日々よりも誰かに使われた方がずっとマシだろ?……僕よりオルバとヴィリーが、ずっと幸せなようにね」
「……なるほど。お前なりの正義が、そこにあると言いたいわけか」
「ふわぁ、なんですの?先ほどから騒々しい……」
二人が戦いを続ける中、眠たげな女の子が現れた。
ブルーグリーンの髪と瞳を持ち、赤いドレスを着たいかにもお嬢様、といった出で立ちの子供。
「しまっ………」
「おーっと動くなあ!」
子供を助けねば、とアレクサンドラが動く前に、ルートヴィッヒが制止をかけた。
「おいお前!さっさとこっちに来い!」
「駄目だ!そちらに行くな!」
「あなたは……?」
女の子は、とろんとした目をアレクサンドラへ向ける。
「ああ、もういい!言うことを聞けえガキ!」
ルートヴィッヒは、笛に口をつけた。
「く……、あの笛は……!」
ぴーひょろろと音が鳴ると、女の子はゆっくりと前に進み歩きだした。
「よーし、いい子だ。こっちに来い」
「え、普通にイヤですわ」
「へ?」
女の子はつかつかと歩いてアレクサンドラの方へ近づいた。
「ではそちらのあなた、エスコートよろしくですわ」
そう言って、女の子はスカートの裾を摘んでお辞儀をした。
「え……あ、ああ………」
「な、なんで僕の笛が効かないんだ!」
「あら?わたくしなにか粗相でも?」
「気にするな」
「キミは安心して引き続きまどろむがいいさ」
「……変な夢ですわね?でもそういうことでしたら、ふわあ……」
欠伸をしながら、女の子はアレクサンドラの後ろに回って、地面に寝転んだ。
「さて……ここからは私の仕事だ!」
アレクサンドラはもう一度しっかりと長剣を構える。
「くそっ!僕は僕なりに子ども達のことを想って……」
「ふざけるな。貴様は結局のところ、自分のために子どもを金にしようとしただけの……心底軽蔑に値するゲスな犯罪者の一人だ」
「……う、うるさいうるさいうるさい!」
駄々っ子のように叫び、ルートヴィッヒは笛を吹くのだった。
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アレクサンドラに打ち負けたルートヴィッヒは膝を着いた。
「ルートヴィッヒ!」
アレクサンドラの後ろからそんな声が聞こえた。
「おい、アレクサンドラに殺されてないだろうな!」
「オルバ……ヴィリー………」
ミュラー兄弟が2人の傍にやってくる。
「……私からしたら……お前達の方が、ずっと羨ましい時だってある。だから、自分になにもないなんて言わないでくれ」
「ああ……そうだな……。……ただ、もし僕よりも帝国を呪うに充分な動機を持ち、確固たる信念と正義を持って帝国を害す、そんな民が現れたら……アンタはどうするつもりだ?」
「悩むまでもない話だ。その時私は、全身全霊をかけてその者を……、絶対に幸せにしてやろうと躍起になるだろう。この……帝国で」
「……あはは!それはいい!」
「塀の中から見させてもらうよ、アンタのその眩しい正義を」
「ああ、見ておけ。きっと楽しませてやる」
そう言って笑うアレクサンドラの横にオルバが立つ。
「……色々ありがとな、アレクサンドラ」
「なんだ、気持ち悪いな。あの子が寝ている内に、さっさと帝都に戻るぞ」
「へいへい」
お嬢様らしき女の子はすやすやと地面の上で眠っている。
「立てるか?ルートヴィッヒ」
そう言ってオルバはルートヴィッヒに手を差し出した。その傍にヴィリーも寄る。
「帝国を滅ぼすに充分な理由を持つ者……か」
3人の様子を見ながらアレクサンドラは、ひとり、呟くのだった。
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〔エピローグ〕
「そんなことがあったんですね………」
アレクサンドラから過去の話を聞き終えたユーゴが、そう呟いた。
「お話に出てきたミュラー兄弟は、今どうされて?」
「……二人とも亡くなったよ、この戦争でな」
アレクサンドラは天を仰ぐ。
「そうでしたか……」
そう話す2人の居る部屋の扉が開いた。
「そろそろお二人の出番ですよ。準備はよろしいですか?」
そう言って、この国の宰相であるアウグストが入ってきた。
「は……はい!僕はいつでも!」
「……私も問題ないさ」
「そうですか。では行くとしましょう。我らが、帝国のために」
「……ああ、行こうアウグスト。我らが、帝国のために……」
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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード アレクサンドラ
ep.3 芽吹くもの
あいつとの出逢いが、私を迷わせる……