エピソードまとめ
□イェルシィ・トゥエルチュ・ハイナジン
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ep.2 あなたと共に食卓を
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「ねぇ……これって……あれだよね」
山頂でイェルシィは群生した花を見つけた。
「はい!虹色に輝く花弁……これが、"源獣の祝福"です」
「おいおい、マジかよ。こいつは大発見だ。割に合わないことに付き合わされてると思ってたが……伝説の霊草がこんなにあるとはな!上に報告したら釣りが出るほどの収穫だ」
頂上に数多く咲いている花を見てガスパルも喜んだ。
「良かった……。これでトトが治せる!ホントに良かった〜!」
そう言ってイェルシィがホッと胸を撫で下ろす。しかし、
「…いや、そう簡単にはいかなそうだ」
銃を構え、後ろに向けるガスパルにつられ、2人が後ろを見れば、怒った様子のマドルガンテがそこにいた。
「さっきの……!」
ミシェルも慌てて杖を構える。
「やるしかないな!」
「やっと追いついたぜ……!さっきの"お返し"!今度こそさせてもらうかんね!イェルシィ・トゥエルチュ・ハイナジン……押しーる!」
そう言ってイェルシィは槍をマドルガンテに向けて突くのだった。
〔マドルガンテ残りHP半分〕
「くっ…、さっきも結構戦ったはずなのに、なんか全然弱ってるって感じしない……」
「それどころか強くなってる気さえするな」
「……推測でしかありませんが、恐らく"源獣の祝福"の力かと。高濃度のマナを発しているので獣に力を与えているのかもしれません」
「なるほど」
「……それもあるのかもしれないけど、なんかちょっとこの獣……必死な気がするんだよね。なんでだろ……」
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「ふう……これで……」
マドルガンテの巨体がようやく倒れて、イェルシィは息を吐き、トドメを刺そうと槍を構えた。
「ん?」
何か聞こえた気がして、イェルシィは槍を下ろす。
「おいおい、なにやってんだ。トドメを忘れたのか?」
そう言ってガスパルがイェルシィの代わりに銃口を獣に向けた。
「……待って!なんか聞こえる」
そう言ってイェルシィが岩場の方へ掛けて行く。
「…こっちの方!」
イェルシィは岩場の後ろを覗き込み、後ろをついて行ったミシェルも同じように覗きこんだ。
「これは……」
そこには、キィキィと鳴き声を上げる小さな猿のような獣が2匹いた。ガンテの子供のようだ。
「だから……必死だったんだ」
2匹の子供は、イェルシィたちの横を抜けて、倒れたマドルガンテの傍に駆け寄った。
「……なるほどねえ」
「お願い、ガスパっち。その獣は殺さないであげて」
未だ銃口を向けたままのガスパルにイェルシィがそう頼む。
「……ま、いいか。俺の仕事は獣の討伐じゃねえし」
そう言って、ガスパルは銃を下げてくれた。
「それより……この花畑の方がお手柄だ」
「この場所のことも誰にも言わないでほしいの」
「え……」
「この親子の場所だから」
「おいおい……さすがにそれは……」
ガスパルは困るとイェルシィを見れば、彼女は指を組み、お願いのポーズを取っていた。
「……はあ」
ガスパルは大きなため息を吐く。
「ほんっと、割に合わないねえ」
ガスパルは優しくそうボヤくと、イェルシィがワッと駆け寄った。
「ありがとうございます!……ガスパっちは疑うのが仕事って言ってましたけど。あたしは信じるのが仕事!みたいな?」
そう言ってイェルシィはニカッと笑って見せた。
「だから……信じてますから!」
「……へいへい。ご厚意ありがとさん」
その言葉にイェルシィは「えへっ♪」ともう一度笑って見せるのだった。
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〔エピローグ〕
源獣の祝福を摘んで、イーディス騎士へ帰還したイェルシィとミシェルは、すりおろしたそれをトトに与えた。
「どう、トト……?」
不安そうに、何も見えないベッドの上を見つめるイェルシィをミシェルと、彼女達が帰って来るまで代わりに見えないトトを見ていたマクシムとヴァネッサが見つめる。
イェルシィの瞳に映るトトは、ゆっくりと起き上がった。そして、
「すっきり」
と笑顔で声にだした。
「今の声……これがトトさんの?」
パチリ、とミシェルが目を見開く。彼女だけでは無い。
マクシムとヴァネッサも驚いた顔をしていた。
「ああ!あの時と同じ声だ!」
以前、火山道で1度トトの声を聞いたマクシムがそう答える。
「す、凄いよ、トト……。みんなと話せるようになったの!?」
「だが、なぜ突然……?」
不思議そうにヴァネッサは、姿の見えないベッドの上を見つめた。
「これも源獣の祝福の力でしょうか……?」
ミシェルも不思議そうに考え込んだ。
「いっぱいすき、たべた。ぱん、がれっと、ろーすとちきん、たまご、とまと、すーぷ」
トトは拙い言葉で、そう伝えていく。
「おなか、ぱんぱん。いま、へいき」
その言葉にみんな固まった。
「…あれ?それって……」
「まさか……トトさんが苦しんでたのって………」
「ただの、食べ過ぎか?」
「そんだけ!?大騒ぎしてそんだけーっ?」
三者三葉に驚く中、イェルシィはぎゅうとトトを抱きしめた。
「もー、トトってば!本気で心配したんだからねーっ!」
「イエルシィのごはん、すき。イェルシィ、いっぱいすき」
そう言ってトトもぎゅーとイェルシィに向けてその小さな手を伸ばした。
「あたしもっ!あたしも、大好きだよトト!」
イェルシィはいっぱいの笑顔でトトを抱き上げるのだった。
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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード イェルシィ
ep.3 キミと共に見る世界
文化祭ってめっちゃアガる〜♪