エピソードまとめ

□マクシム・アセルマン
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ep.2 恋をしたって本当ですか?
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「うーわー、やられたー」

またも棒読みでそう叫びながら、ヴァネッサが倒れた。

「残るは貴様だけだ!さあ覚悟しろ!」

そう言ってマクシムは、スィナンに的を絞った。

「くそっ……!」

スィナンは右手を前に、左手を後ろに回し、後ずさった。


落ち着け、マクシム!これを外せば彼の命はない!二人が咲かせた恋の花……決して散らすものか!とマクシムは心の中で、覚悟を決める。

「てえいっ!」

マクシムはスィナンの脇の下に狙いを定め、矢を放つ。

「ま、待て!」

「え?」

何故かモルトが静止の声を上げた。
しかし、矢は放たれてスィナンは脇の下をマクシムが撃った矢が通り過ぎる直前後ろに身体を捻って、隠し持っていた矢を持った手を左手胸の前に動かし刺さったようにして見せた。

「ぐあっ!?」

矢が刺さった振りをしたスィナンは悲鳴を上げて、モルトに背をむせるように倒れた。

「やったね、マッキ先輩!」

「ふう、良かった……」

マクシムは作戦が上手くいったことに、ほっと息をついた。

「モルト殿。これですべて解決だな。あとは我々に任せてくれたま……」

「なになに!?なにこれーっ!」

急に、足元が砂地獄と化し、ずりずりと下へ飲み込まれて行く。

「な、なんだ!?これもお前達の作戦か!?」

マクシムは砂の穴に滑り落ちながら、いる所が岩場のおかげで砂の穴に滑り落ちないでいるレオ達を見上げた。

「い、いや、俺達はなにも……」

レオ達も何も知らないようで、彼らも必死で岩場にしがみついている。

「きゃっ……!」

悲鳴が聞こえ振り返ると、オルタンスの足元の砂も崩れ彼女も吸い込まれて行く。

「お嬢様…!」

「オルタンス!」

モルトが慌てて手を伸ばすが、それよりも先に死んだふりをしていた、スィナンがオルタンスの元に駆け寄って彼女を抱きしめた。

「なっ!?お前、なぜ……!」

生きている事に驚きながらモルトも、スィナンとオルタンスも、マクシムもイェルシィも穴へと落とされたのだった。


砂がクッションとなり大事には至らなかったが………、問題はあった。

「ひいいいいっ!ななっ、なにこいつーっ!」

マクシムは目の前に居た、砂鎧で身体を固めた大きなカメレオンの様な獣がいた。


「砂漠の主のようですね」

聞き慣れ声がして振り返れば、リュシアンか居た。

「リュシアン!?」

彼は長剣を携えて、マクシムの隣に立った。

「倒してしまいましょう」

「あ、ああ!」

マクシムは弓を構え、イェルシィも槍を構え二人の傍に駆け寄ってきた。
一緒に落ちてきたスィナンとオルタンスの護衛は、モルトに任せることにして、3人は獣─デュゲッコと対峙するのであった。

「しかし、お前……なぜこんなところに……」

「それは、こちらの台詞ですよ。お二人を逃がすルートの確保をしていたのですが。まさかあなた達が落ちてくるとは。……どうやら、計画の実行は難しそうですねえ」

「そうだな。スィナンが生きてることがバレてしまったし。我々の信用も失われた……。別の手を考えねば。はあああ……あと少しだったのになあ」

「うーん……でも、もしかしたら……このままでも大丈夫かもしんないよ?」

「えっ、どういうことだ?」

「……まあ、まずはこの獣をやっつけよ。他のことはそのあと考えるってことで」

「ええ!?大丈夫なのか、そんな適当で……」


そうこう話ながらも、攻撃の手はやめず、ブレイズである彼ら三人にとっては造作もない敵であった。

「いえーい!大勝利!」

デュゲッコを倒し、イェルシィは手を挙げて喜ぶ。

「二人とも、無事かっ?」

三人は、オルタンスとスィナンの元へ向かう。

「怪我はないようですね」

「良かった……」

二人の無事を見てほっかりとした三人は、傍にモルトがいた事を忘れていた。

「……そういう、算段だったか」

「あ、あのだな、モルト殿。これは……」

マクシムが言葉に困っていればモルトは口を開いた。

「……悲しむべきことだ。お嬢様は獣に飲まれてしまった」

「えっ?」

オルタンスが驚いてモルトを見つめる。

「そう、報告させてもらおう」

「モルト殿……!」

「これは不幸な事故だ。だから……これで終わりだ」

そう言ってモルトは踵を返し立ち去っていく。

「ありがとう……モルト。必ず幸せになります!」

オルタンスはそうモルトの背中に誓うのだった。



リュシアンの用意していた逃走ルートを使って地下から脱出し、ワースバードの街の出口で二人とは別れる事になった。

「それではレディ。お元気で」

「マクシム様……。こんなにもお世話になったのに、なにもお返しできるものがございません…………」

別れを告げるマクシムにオルタンスはそう言ったが、マクシムは首を振った。

「いえいえ!僕はただ心の花をあなたに捧げたまでのこと。礼は……微笑み一つで充分でしょう!」

真っ直ぐとオルタンスを見つめてマクシムはそう言った。

「騎士マクシム」

オルタンスもマクシムを真っ直ぐと見つめる。

「あなたがくれた花……私は生涯忘れません」

そう言ってオルタンスは、微笑んでみせるのだった。


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〔エピローグ〕

「……はあ」

騎士学校に帰っても、失恋したマクシム少し落ち込んでいた。

「マッキせーんぱい!」

そんな彼の背中を元気よくイェルシィが叩いた。

「うわっ、なにごとよっ!?」

「はい、これ」

驚くマクシムに、イェルシィは額縁を手渡した。

「こっ、これはコトロマの!」

額縁の中には弓を持った騎士の絵とサインが書いてあった。

「そう!風弓の騎士ナルスの絵!直筆サインつき〜!」

そう言ってイェルシィは胸を張る。

「ど、どういうこと?」

マクシムは首を傾げる。

「あちこち駆けずり回ってお願いしたんだ〜。好きっしょナルス卿」

イェルシィはマクシムを指さす。

「もちろん好きだが……どうしてこんなことまで?」

「レディ・オルタンスに捧げた騎士としての愛………。このイェルシィ、感服しました!」

そう言って胸に手を当てた。


「だから……これは、あたしからマッキ先輩に捧げる尊敬の花!」

「そうか……」

イェルシィの言葉を聞き、マクシムは噛み締めるように目を瞑る。

「うん……。ありがとう」

マクシムは満面の笑みをイェルシィに向けた。

「いひひっ、カッコよかったぞ!」

そう言って、イェルシィはサムズアップとウインクを送り返すのだった。


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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード マクシム

ep.3 ふぞろいの僕たち

心機一転!前に進んで行くとしよう!
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