エピソードまとめ
□リゼット・レニエ
18ページ/18ページ
ep.2 絡みつく過去
─────────♢────────
「やれやれ……どうにかなりましたかね」
キャサリンがやっと倒れ、リュシアンは一息ついた。
「お怪我はありませんでしたか、リュシアン」
そう言ってヴァネッサは彼に寄り添った。
「ええ。ありがとうございます、ヴァネッサさん」
そんなやり取りをする二人の後ろからリゼットが歩み寄る。
「モラクス……。素早く的確な判断だった。デュフォールもよく退かなかったな」
「……たまたまですよ」
リュシアンはそう言って謙遜する。
「それでいいさ。時には"退かない"という リスキーな選択もとれる……。それだけでお前の戦術の幅は、より一層広がるはずだ」
「ありがとうございます」
「さて、少将こそ逃がしてしまったが、この砦はほとんど制圧できたと見ていいだろう」
「そうですね。では報告に戻りましょうか」
そう言って3人は砦を出るため、歩き始めるのであった。
────────────────────
〔エピローグ〕
任務を終えた三人は、イーディス騎士学校のある森都ルディロームまで戻ってきていた。
「ご苦労だったな、諸君」
ルディロームから騎士学校へまでの道中、黒いローブに黒い帽子を被り、腰まである長い金髪髪の年配の男性が、三人の行く手を塞ぐように現れた。
「久方ぶりだな、リゼット」
男は親しい口ぶりでリゼットに話しかけるが、リゼットの空気は一瞬にしてピリついていた。
「ええっと教官?この方はいったい……」
リゼットの様子のおかしさを感じ、ヴァネッサが後ろから尋ねる。
「……悪いが。先に行ってくれ」
リゼットは振り向きもせず、そう告げる。
「で、ですが……」
ヴァネッサは男の怪しさに、リゼットを心配するが、そんな彼女の肩にリュシアンが手を置いて引き止めた。
「ヴァネッサさん……行きましょう」
「……はい」
ヴァネッサは渋々と言った様子で返事をし、リュシアンと共に去っていく。
「"あれ"の不手際の後始末、ご苦労だった」
「やはり、貴様の組んだ作戦か……」
「あれは希有な能力の持ち主だからな。重用もされる。まあ、全盛期のお前ほどではないがな」
「……心にもないことを」
「いや、私はこう見えて真摯に願っているのだがね。またお前には、……ル・サントの時のように、いい働きをしてもらいたいと」
その言葉に、リゼットは激情し、脚を振り上げ、ヒールのつま先を男の喉へ向けた。
男はなんでもないような顔して、両足を揃えたまま後ろにぴょんと飛んでそれを避けた。
「……今のは問題行動だな」
ズレた帽子を直しながら男はそう言った。
「さすがに、罰を与えなければいけない」
男は、後ろ手に腕を組む。
「知ったことか。このままここで貴様を……」
リゼットは銃口を男に向ける。
「……ガスパルに」
「くっ……」
その名を聞き、リゼットは苦虫を潰したような顔をして、銃を下ろした。
「冗談だ」
そう言って男は後ろ手を組んだまま、リゼット横を歩いて行く。
しばらく進んで、ぴた、と足を止めた男は振り向いてリゼットを見た。
「お前に言わないのは不公平だったかな?あまりガラじゃないが仕方ない」
男はまた背を向ける。
「リゼット・レニエ……"よくやった"」
その言葉は、リゼットが生徒達を褒める時によく言うものだった。
リゼットはぎゅう、と拳を握り、男が立ち去っていくのを待った。
「……まったく。私もあいつも……なにをしているんだろうな……」
そう呟いて、リゼットは空を見上げた。
「……アニエス……」
緑色のマナの川が架かる晴天に、亡き妹の名を呟くのだった。
────────────────────
〔次回予告〕
テイルズオブルミナリア
エピソード リゼット
ep.3 贖罪の刻
私の過去を知りたいか?