エピソードまとめ
□ミシェル・ブーケ
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ep.2 理解の縁
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〔這い進む倒木の下〕
「くそっ……またこれかよ……」
「この体勢……結構辛いですよね……」
〔道中会話〕
「はあ……はあ……」
「……ミシェルちゃん」
「気にしないで下さい。私は大丈夫ですから………」
「だけどよ……」
「……ドロテさんのこと絶対助けましょう。"二人"で……」
「"二人"で……か。……ああ!俺とミシェルちゃんなら絶対に大丈夫だ!」
「……はい。私は今あの時みたいに一人じゃない……。今はそれだけで心強いですから……!」
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二人は川の崖に掛かった吊り橋を渡り、その先へ進んだ。
先には山小屋があり、その周囲には草花が生い茂っていた。
「見て下さい!あそこに!」
ミシェルの指さす先に、倒れた人を見つけた。
「ドロテさんか!」
二人は急いで駆け寄った。
「気を失ってるだけのようです!」
「良かった!でも、この状況は……」
上を旋回していた、獣が降りてきた。
「ええ……」
「……俺が時間を稼ぐ」
そう言ってレオは獣へ向かって歩いていく。
だが、獣は1匹ならず、もう2匹降りてきた。
「その間にドロテさんを連れて逃げ……」
「却下です」
「なあ……今回ばかりは俺も譲れないんだ」
レオは刀を構え、獣と対峙しながらそう言う。
「守るべき人を守るのが俺達の務めだろ?だから……」
「……そうですね。では、ご忠告の通り……」
そう言いながらミシェルは歩き出す。
「守るべき人を全員、守ることにいたします!」
杖を携えたミシェルはレオの背に合わせるように立った。
「な……!……まったく、俺の覚悟を無視しやがって……」
「あなたに言われたくないです」
「……だな。学校じゃ悪かった。でも、今度こそキミへの認識を改めたぜ」
「……私も、少しだけあなたが理解できました」
「……じゃ、行きますか」
「ええ」
「背中は預けるぜ。"ミシェル"!」
レオは初めて、彼女に"ちゃん"を付けなかった。
「任せて、"レオくん"!」
ミシェルもそれに応えるように、"フルカードさん"呼びを辞めた。
「早く獣達を倒して、ドロテさんを連れて帰ろう!」
「マルクを独りにさせないためにもな!」
「うん!マルクくんに私達のような涙は、絶対流させない!だからお願い……どいて!」
二人は三体の獣─ヴァルダートへ立ち向かって行った。
三体倒し終わると、追加で四体降りてきた。
「こいつは……"群れ"って言うだけあるな」
「ちょっとは減らせたと思ったんだけど……」
「そうだよな。でもやるしかねえだろ?ミシェル!」
「……うん、そうだねレオくん!」
四体倒し終わると、また三体降りてきた。
「……レオくん、大丈夫?」
「なんとかな……そっちは?」
「私も同じ……立ってるのがやっとだけど……」
そっかあんま無理すんなよ?
「ここで無理しないって選択肢が、むしろ無理だよ」
「ははっ、そりゃそうだな!っしゃあ!やるぜえええ!」
倒してと倒しても降りてくるが、恐らくこれがラストだろう。ヴァルダートではなく体の大きい個体ボス格の獣─ヴァルクリーガが降りてきた。
「"群れ"がこんなに多いなんて………」
「ああ……まだ来るのかよ。でも弱音なんて吐いてらんねえ!」
「うん……私達は絶対に諦めない……!大切なものをこの手で守るために!」
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雄叫びを上げて、ヴァルクリーガが倒れた。
「はあ……はあ……やったか……」
「ドロテさん!」
ミシェルは急いでドロテの元へ駆け戻る。
「う……お前さん達」
どうやら意識を取り戻したようだ。
その手に背を添えて、ミシェルがゆっくりと上半身を起こす。
「ばあさん!無事だったか!」
レオも急いで走ってくる。
「ああ……まさか、森に獣が出るなんてね
……。でも、ブレス草はちゃんと手に入ったよ……」
そう言いうドロテの右手には花の咲いた草が握られていた。
「そいつは良かっ……」
「……おばあちゃん!?」
後ろから男の子の声が聞こえて慌てて振り向くと、マルクが立っていた。
「マ、マルクくん?どうしてここに?」
マルクは駆け寄って、ドロテに寄り添った。
「マルクや……」
「おばあちゃん……。……僕、おばあちゃん達が大切だよ。だから、もう……危険なことはしないでね」
「ふふっ……、そうかい。お互いさまってことかい」
そう言ってドロテはマルクの頭に手を伸ばした。
「……本当に良かった」
ミシェルは一息ついて立ち上がる。
「これは……私達、"二人"の勝利だよね?」
「そうだな。これは俺達"二人"の……。ブレイズのミシェル・ブーケとレオ・フルカードの勝利だ!」
そう言ってレオは右手の手のひらをミシェル向けた。
「うん!」
ミシェルは笑って、その手のひらに自分の手のひらをぶつけてハイタッチするのだった。
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〔エピローグ〕
任務を終えた二人は、コルテン村からイーディス騎士学校へ向けて歩く。
その足取りは、行きよりも軽く、二人の距離も近くなっていた。
「それにしてもぶっちゃけた話さ……」
隣を歩くミシェルに、レオは話しかける。
「うん?なにかな」
「俺……正直、あの戦闘で、絶対気高く死ぬと思ってたわ」
「あ、それ、実は私もだよ。でも、二人の連携が、奇跡的に上手くいったというか……」
「ああ。それもこれもミシェルのおかげだよ。なんつうか俺、キミがいてくれると力が
湧くんだ」
「え?そ、そう……なの?」
ミシェルはレオを見上げた。
「……うん。やっぱ、俺にとってミシェルは特別みたいだ。思えば、過剰に守ろうとしてたのも、この気持ちのせいだな」
その言葉にミシェルの顔が赤く染っていく。
「え、え、ええ!?あ、あの、あの……」
「ミシェル、俺、キミのこと……」
「私のこと……?」
何を言われるのか、とミシェルはドキドキとした。
「無意識にだけど、一目見た時から凄く……」
「す、凄く?」
「……ばあちゃんに似てるなと、思ってたんだよな!」
ニカッと凄くいい笑顔で、そう言った。
「……はい?」
反対にミシェルの表情は、鋭いものに変わった。
「そりゃ、攻撃も躊躇うし、ぎくしゃくもするわ!」
ミシェルがジト目で見てるのに気づかず、レオは笑って言っている。
「だって、ばあちゃんだもんな!スッキリしたぜ!」
「……へー、ソウナンダー……」
ミシェルは感情の消えた声でそう言って、レオを置いて大股で歩いていく。
「あ、あれ?ミシェル?」
「……はい。なんでしょう、"フルカードさん"」
「なんか喋り方、戻ってる!?え、なんで!?」
「知りません」
「そう言わず教えてくれよ!なあ、なあ!?」
「うう……!やっぱり私、貴方が苦手ですう!」
そう言ってミシェルは走ってレオから逃げていくのであった。
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〔次回予告〕
次回、テイルズオブルミナリア
エピソード ミシェル
ep.3 遠くの背中
お父さん……お母さん……。
私もいつか二人みたいに……。