ダイヤモンドリリー / Levi Dream

□diamond lily * 1
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それは遥か遠い過去の中。ある日を境にひとつの座標が交わった。音を立てずに崩れていく世界の中、私の頭の中で響く鈴のような優しい声に自然と意識が朦朧とする。

深い深い、森の奥にひとつポツリと佇む古城。誰も使っていないのか、埃や蜘蛛の巣が当たり前にちりばめられていた。小さな物音もしない、悲しい雰囲気を纏った古城はまるで、────生きているようだった。不気味?怖い?…否、違う。それ以上に不思議な感覚に陥った。フワフワとパラレルワールドに迷い込んできてしまっかのような錯覚はいつまでも私の体を襲い、感覚を鈍らせた。


『────お願い。どうか、座標を、取り戻して。』
「……座標?」
『このままだと、世界が、人類が…消えてしまう。』
「……貴方は、誰?」
『頼みましたよ。───ルイ。』


頭の奥深くで木霊する声と同時に、目を開けるのも辛くなるほどの眩い光が私を包み込んだ。奇妙、だ。なのに不思議と痛みや不快感は存在しない。ただ身体の全ての組成がじわじわと物理的に絞りあげられているような感じがあるだけだ。雑巾のように絞りあげられていく感覚がそこにはあった。

ああ、私は誰だろう。

この世界の構造や仕組みが流れるようにして脳に流れ込んでくる。何百枚もの映像がまるでビデオのようにして休むことなく脳裏に流れる。だけど、焦る事も、恐怖に顔を歪めることもなかった。不思議、だ、とても。途端に、私の体を真っ白な光が包み込む。優しい光が全身を包み込み次第に意識がクリアになっていく。ああ、この感覚は…いつぶりだろう。

次の瞬間、真っ白な光はどこかへ消え、残ったのは私の意識と、


「…………壁?」


空高くまで伸びる頑丈な壁だった。さらに視線を上にあげてみればそこにあったのは夜空にぽつんと佇んでいる月。青白い月は明るく高く星をかき消して夜空を渡っていく。そう、満月だった。青白い月光が幻想のようにその辺りを照らし、包み込む。その刹那、伸びた影はきっと、私のもの。自分の手を見下ろしてぎこちなく動かしてみる。真っ白なワンピースが肌寒い風に揺れ、小さく身震いをしてみる。


「私の名前は、___ルイ。」


名前以外何も思い出せない。思い出すなとでも言っているように何かで頑丈に封じ込められた蓋。蓋を開けようとすれば私を襲う激しい頭痛。なのに、無意識に頬が上がった。ああ、目覚めたんだ、とその時、瞬時に理解した。


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