Works

□2020
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「神様って信じる?」


部屋の灯りが視界の端で揺れている


「私は信じてるかな?信じていたいだけかもだけど」



「そっか」







私たちは数時間前に年末の歌番組を終え、一緒に部屋に帰って来た。

年越し特有の高揚感を一人で抱えたまま寝るのがなんだか寂しく感じてしまって、忘れ物がないよう確認している理佐に声をかけた。

「いいよーでも珍しいね?」
なんてイタズラな笑顔で答えてくれた。




部屋につき、互いにお風呂にも入り、ようやく落ち着くことが出来た頃

私はテレビ台の前にちょこんと置かれた生き物を見つめ、どうでもいいような

でもここ最近、ずっと聞きたいと思っていた質問を投げかけた。


欅坂46として5年間過ごし、改名を経て、その中で自信を持って歩んだ数カ月

大きすぎるグループ名に振り回され、不安に苛まれ、自分の存在さえ見えない日が続いた。

神様がいるなら…もういっそ全てをリセットして欲しいと願った日もあった。

今隣にいてくれる貴女が何を考えているのか知りたいと思った。

冷たくなってきてしまった私の右手に優しく左手が重なる。


「由依は神様いると思う?」


「私は…いて欲しいと思ってた。苦しくて逃げたかった。でも出来なくて」


数秒の沈黙に居心地の悪さを感じていると慰めるように力強くぎゅっと握り直してくれる。

本当にこの人は優しい。優しすぎるくらいだ。


理佐は人の気持ちに寄り添ってくれる人だから、泣きそうだからといって
こっちを見たりしない。前を向いたまま、言葉を紡ぐ。


「由依も私も他の皆もきっと同じ気持ちを感じてきたんだと思う。

でもここに立つ覚悟を胸に今日まで歩いてきた。それだけでもう十分だよ。

頑張ったよね。本当に。」

頬に感じる涙。きっと理佐の頬にも流れているだろう。

胸がいっぱいでどうしたらいいのか分からない。

じっとしていられなくなって、理佐の頭をぎゅっと抱きしめ、

私たちは静かに泣いた。




どれくらいそうしていただろうか。

どちらのものとも分からない鼻をすする音と背中で感じる痛いくらいに握りしめた拳。

二人だけのこの部屋でどうか今だけは弱いままで、ありのままでいさせて



神様、どうか私の大切な人が今年も笑顔沢山の一年を過ごせますように。
そしてその隣で笑い合えますように。




END
 

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