main 長編
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大きな部屋に案内され待つこと数分
いかにもな感じの男が現れた
村長と言葉を交わす三蔵を、僕達は静かに見守る
(それにしても三蔵が自分から謁見を望むなんて…)
なにか理由があるんだろうけど、全く見当もつかない
少しして使用人だろう男性がお茶とお菓子を持ってきた
何故か彼からは甘い桃のような香りがした
「うまそー!これ食っていいの?」
「どうぞ。うちの村で作った菓子です、絶品ですよ」
悟空は嬉しそうに頬張っている
宵風と呼ばれた同い年程の彼は、僕らに一礼をして部屋を出ていった
「それで村長…ここは妖怪による被害を受けていないと聞いたが」
「ええ、そうなんです。幸運にもこの村は資源に恵まれておりまして…それを妖怪と共有することで襲われることはないんです」
「資源……?」
三蔵が訝しげに村長を見る
しかし本人はどこか含みのあるような笑顔
「して三蔵様。この村にはどれほどご滞在の予定で?」
「先を急いではいるが……なにぶん霧が晴れない事には動けないのでな。しばらくは」
「そうですか、ではここの離れをお使いください。身の回りの世話は私どもの使用人にさせましょう」
部屋を出る時に、村長はわざわざ僕達を呼び止めて釘を指した
「敷地内の蔵には近づかれないようお願い致します。古くていつ崩れるやも分かりませんから」