main 長編
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人と妖怪、化学と妖術が共存を果たす
無秩序かつ安寧の大陸ーーー桃源郷
平和なハズだったこの地が狂ったのはいつからだろうか
人は妖怪に怯え、隠れるように生きなければならなかった
でも私のいる村は違う
共存とまではいかないけど、妖怪に襲われる心配をすることなく人々は生きていた
その理由は多分『私』がいるからで
「……森羅?どうしたの」
珍しく起きている彼女に問う
『なぁんか面白そうな予感がしたんだ。俺の退屈な日常も、これで終わりかな』
その声にいつもの気だるさは感じられなかった
「なによ面白いことって。この村から私を連れ出してくれる人でも現れるってワケ?」
『なんだ、まだ諦めてなかったのか』
「当たり前でしょ?来週20歳になるんだから…何としてでも逃げ出さないと」
その日は森羅万象の第二解禁日
私はどうしてもそれまでにこの村から出ていかなければならない
なんて、首に繋がれた鎖を見て愚かな願いだと自嘲する
『雛菊。一つだけ教えてやろう』
「…なによ」
森羅の姿を直接見たことはないけど
その声色から彼女の口元は弧を描いていると分かった
『黄金の太陽が、きっとお前を照らしてくれるだろう』
その時は何を言ってるかさっぱりだったけど、それから数日後に私は森羅の言葉の意味を知ることとなった