NRC
□特殊な能力
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主語が抜けようが、言葉が無かろうが関係無い。
僕にはフロイドが分かるし、フロイドにも僕が分かる。
それだけで、僕等は充分だ。
「僕の前では主語をキッチリ入れた正しい文脈で話しなさい!」
「はい/は〜い。」
返事に軽く鼻を慣らして踵を返す姿を見送り、再び廊下を歩き中庭へ出る。
授業までには教室へ戻らないといけませんが、少しだけ…。
木蔭に並んで座ると、横になったフロイドが僕の膝に頭を乗せて小さく笑う。
その髪を撫でながら、僕も笑う。
「今日は気持ちいいね〜。ねぇジェイド〜。」
「ダメですよ、授業は受けないと。」
「え〜……いいじゃん今日はさ〜。」
「…仕方ありませんね…今日だけ、ですよ?」
「あは、ジェイドだ〜い好き。」
「はい、僕もです。」
程なくして寝入るフロイドの頭を撫でながら、無意識に緩む顔を自覚して笑ってしまった。
お互いだけが分かれば、充分だ。
僕等はこれからもずっと、こうして共に生きて行く。
仲間が欲しい訳じゃない。
だからどうか……、この穏やかな時間を、ずっと……。
「…誰にも、邪魔させません…。」
end.