隠庵書庫
□クリスマス
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「ラスカは」
眼下に賑わう街を眺めながら、ルーツが切り出した。
「『今日』がなんの日か知ってる?」
ラスカは暫し思案し――なるほど、『クリスマス』か――と思い至った。
少しバツが悪そうに言う。
「すまん、忘れていた」
「やっぱり」
そうだと思った ――ルーツはくつくつと笑い、それから、「ボクも」と言った。
「すっかり忘れてた。馴染みがないからね」
「そうだな、――そういえば」
ラスカは以前、街中で聞いた話をふと思い出した。
「この日は仲の良い者同士、贈り物をしあうらしい」
「あ、知ってる! 『プレゼント交換』ってやつでしょ」
頷き、ラスカは続ける。
「せっかくだ、我らも互いに、何か贈り合ってみるというのはどうだろう」
「さすがはラスカ! いい考えだね!」
ラスカの提案に、ルーツの表情がぱっと輝く。
「そうと決まれば!」
言うが早いか、ルーツはラスカの手を取り、賑わう街へと飛び立った。
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2022.12.24