覚醒

□罪と罰
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 その日の二限目蛍は不幸にも宇宙波を感知していた。終わりかけなこともあり授業を途中で離脱するのが癪でどうにか耐えたものの、やっと終わったという頃には密かにひとり汗を滲ませている。途中からは教師にも気がつかれ同情がちな気遣いを見せられ不快な気持ちでいた。自分の目がどうなっているかもよく分かっていない。

さすがにこれ以上は耐えられないと理解していた蛍はおとなしく保健室へ向かうことに決めた。同級生に軽く伝えると、道中ずるずると唸りながらもどうにか目的地へたどり着いた。扉を開く。こうやって蛍が学ぶ授業の内容が穴あきになっていったのは発症したときから何度あるだろう。


「蛍……?」
「……なに。なんか体調でも悪いの」


 保健室内を見渡すとどうやら養護教諭は留守にしているらしく丸イスの上にひなこが縮こまって座るばかりだ。その表情がぎこちないことから彼女の病患を窺う。蛍は自身が抱える不調からか素っ気ないような態度をとった。


「……ちょっとぜん息がね。蛍はカゼでも引いた?」
「別に。感知しただけだよ」
「それはわかるけど……それとは別に体調が悪そうだよ。せっかくなら病院に行ったら」


CWSは診察無料になるんでしょう。ひなこは言ってすぐ口を閉じた。蛍が何かを言う前にか細い謝罪の声がその場に揺れる。ごめんなさい。ひなこはただスカートを皺にして握りしめ、ひたすらに自分の無神経さを恥じていた。タイミング良くか悪くか養護教諭が戻り、それ以上の言葉は紡がれないまま結局二人してベッド休養をとることになる。

 カーテンを挟んで互いの息づかいが聞こえる。寝転んでいながら、相手が布一枚の向こう側にいると思うとどことなく気まずいような雰囲気が漂う。蛍は痛みに悶えながらもシーツの擦れる音を聞いた。ひなこが寝返りでもしたことが推測できた。ひなこは、蛍が小さな声を漏らすのを聞いた。まるで隣にいるみたいだ。制服をきた二人、眠れないまま時間は過ぎてゆく。


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