覚醒
□罪と罰
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朝は隣人のくしゃみで幕を切る。空気をめいいっぱいに吸いながら人々は町をうつろう。疲労をためた様子の友人を労いながらひなこの朝は始まろうとしていく。仁花は大きく肩で息をしながらリュックサックの肩ひもを握りしめていた。
「おはよう。仁花ちゃんが遅刻ぎりぎりなんて珍しい」
「お、おはよう……今日"共鳴"を起こしてるひとがいて、通学で避けては通れない横断歩道が大変なことになってて……」
「災難だったねえ」
共鳴はCWSとCWSが接触することで稀に発生する現象である。CWSは体内にごく僅かな宇宙波を蓄積しており、それらの型が一致する者同士が接触すると共鳴し宇宙波感知が起こることがある。現在発見されているだけでも数千種類の型が確認されているうえ確率も高くはなく、共鳴が起こるのは初対面時だけだ。
仁花の話を聞いてみれば、自転車運転手と歩行者の関係にあったCWSが共鳴を起こしたおかげで自転車側の運転が不可能となり事故を起こしたのだと言う。最近はこういった事故もかなり増えてきた。誰の非も無いもののとがめ先はやはりCWSとなる。
「……ひなこちゃん、なんか体調悪い? カゼ?」
「もともとぜん息ぎみなの。ごめんね」
「えっいやそんな、謝る必要なんてどこにもないよ! 緊急時にはおまかせください! この前救命講習会を受けてきたから……!」
「(ぜん息に胸骨圧迫を試みるつもりでいる……?)」
蛍はG-type21型宇宙波。CWS人口の七十パーセントを占める一般(General)型の、さらに細かく分類されたひとつだ。type21は七十パーセントのうちの二十パーセントにあたる。蛍が人混みを嫌うようになったのもそれが一因を担っているのかもしれない。ひなこは呼吸の苦しみを飲んで考える。病とCWSは何が違うのだろう。どちらが不幸なのだろう。
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