覚醒

□うすやみの鳳仙花
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 Cosmic wave sensing(宇宙波の関知)……通称CWSは、宇宙波によって及ぶ人体への突発的な影響、若しくはその人を表している。増加傾向である近年においてCWSは千人に一人の割合でその特異性に人々を悩ませていた。


「おはよ。その目どうしたの」
「知んない。朝起きたらなってた」

 
CWSの特異性が身体のどの部位に作用するかは人によって異なり、発症自体も遺伝子情報、性別、年齢に関係しないことが考えられている。頭髪など日常生活に支障の無い範囲で特異性が作用する者も居れば、脳や白血球などに影響が出る者も居り、その多くは死亡することで生涯を終えている。

先天性であるか後天性であるかにもよって生存率は大きく左右され、先天的にCWSであった赤ん坊が(事故や病を除き)何事もなく成人する確率は五十パーセントだ。これは、器官が未発達であればあるほど処置が困難になることが要因とされる。

とは言えCWSは未知の部分が多く、宇宙波を感知しやすい人間(CWS)であるかそうでないかの謎も解明されていない。しかし我々の身近にCWSが増え続けていることも事実であり、現在も保険行政等の早急な対応が求められている。


「(綺麗なパープル……)」
「ツッキーおはよ! ひなこちゃんも」


 ひなこの幼馴染みである蛍は八つのときにCWSとなった。彼の特異は目に表れていて、基本的にはメラニン色素が痛みを伴いながら変動する形で彼を苦しめている。美しく染まったその色とは裏腹に心なしかやつれた顔つきから、昨晩に蛍がもがき苦しんだことが推察できた。

最近は落ち着いていると思われていたCWSの症状も忘れた頃にやってくるらしい。まだ痛みが尾を引いているのか応答もどこか曖昧だ。こういう日の蛍はあまり口を開かない。それでも忠とひなこの二人は今となって慣れっこなので、会話の合間に蛍の体調を軽く窺いながら通学路を歩んでゆく。

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