三流悲劇に喝采を!【灰羽リエーフ】

□その声が誰かに届くまで
1ページ/1ページ

.



「部活にいくぞ!」
「……知っていますけども」
「行きたくなさそうな顔してただろ」


 わざわざなんの用。声を出すのが面倒で顔で尋ねれば、もとからの人相か機嫌が悪いのかへそ曲がりのような顔をした山本に俺だって偶然お前を見つけただけだと返される。一人にしてくれればいいのに。

出身中学校が同じであり、この際お前でもいいからと失礼極まりない態度でマネージャーを頼まれた結果男子バレー部に所属している。普段部活以外では関わってこないし、なんならこの人に至っては廊下ですれ違ったって目を合わせることすらしてこない。別に普通にしていればいいのに。


「お前のご友人はとんでもなく恐ろしいんだ……」


思ったことをそのまま言ったのだが、やたら攻撃的な髪型に反し硝子のハートを持っている男なので、先日「ウザい」と言われた杭が心に突き刺さったまま抜けていないようだ。彼女らに悪気はないのだと弁解しようとしたが彼女らなりに悪気はあったと思うのでつい押し黙る。そこは私の管轄外だ。


「あんなんとつるんで疲れねえのか」
「お前の暑苦しさよかマシ」
「んだとコラ!」


 うだうだ言い続けていれば同じく中庭へ向かおうとしている丸い背中が遠くに見えたので、この暑苦しいものをどこかへやってしまおうと敢えて彼を指差し向こうへパスする。こっちはこっちでやっておくから、頼んだよ孤爪。後で恨まれるだろうけどどうでもいいや。

山本に吐かれた言葉が頭のなかでリフレイン。なんだかよく分からなくなってしまった。悪口言ったり言われたりもするけど、ある程度わたしはそれで心地よいのだ。それなりに生きていけるのなら後は特にこだわっていないのだ。そこに拘泥すればするほど、息苦しくなっていくだけなのに。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ