彼岸を満喫

□7寵愛
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「なぁうちは預け所じゃないんだって」


店の奥で兎さんと薬草をすりつぶしていると白澤様の呆れた声が聞こえた。鬼灯だろう。


鬼灯は極楽満月にほぼ毎日やって来る。

あの日は白澤様と桃太郎さんと連れたってと花街に行った。白澤様はどこかへ消え、私と桃太郎さんは茶屋に入りとりとめない話をした。結局白澤様が戻ってくるまで周辺散策になったのだけどやけに着飾った艶っぽい女性が多い。
暇になったので煙管をふかした客引きの男性の隣に座る。お嬢ちゃんの来るところじゃないと言われてしまった。
やっぱりここはそういうところなんだろう。鬼灯が私を白澤様にやりたくなかったのはこういうことかもしれない。



すりこぎ棒を置いて玄関に行く。

「鬼灯」

「雪、こんばんは。こいつにひどく扱われていませんか」

「ええ、大丈夫ですよ。親切にしてくださいます。桃太郎さんも兎さんも。
毎度来なくてもいいのに。明日もお仕事でしょう。帰ってお休みなさい」

鬼灯の言葉も私の返答ももはや決まり文句のようなもの。


「明後日一緒に出かけませんか。午後からになりますが」

「ぜひ行きたいです。
あの、白澤様」

「いいよ。行っておいで。
午前中の仕事は頼むね」

「それではまた来ますね。おやすみなさい」



鬼灯を見送って店に帰ると桃太郎さんが夕飯を作ってくれていた。

奥に行ってすり鉢の薬草を器に移す。一緒にすりこぎしていた兎さんたちの分もまとめる。

「あ、すみません。これはもう少し細かくおねがいします」

兎さんのうち1匹に椀を返す。残りのものを薬鍋に移して水を少々。兎さんが台台の下に持って来てくれたので下りて受け取る。

「うん、大丈夫ですよ。みなさんもう終わっていいですよ。おつかれさまでした」

兎たちは三角巾をとって外へ出て行く。
台に上り受けとったものを薬鍋に入れて火を入れた。
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