短い話(中身)

□【鬼滅】頑固者を引っ張り出せ
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同じ最終選別を突破した夢主(男)が那田蜘蛛山で炭治郎たちと共闘後の話。機能回復訓練→全集中の呼吸ごろ。お館様の屋敷で働いてる設定





なぁ善逸。お前は一緒に食う飯は美味いと言ったな。お前は身をもってそれを言うんだろう。だからそれは正しいことさ。
同じように俺もいえることがあるんだ。俺はなぁ
一緒に食う飯は好きじゃないんだよ。僻みでも強がりでもない。でもお前と同じように身をもっていうんだ。

俺は恵まれた環境で育った。親も兄弟も人格者だ。しつけもする。家族仲も悪くはない。だのに飯になると俺は自然と視線を下げて胃に飯を詰めることに専念した。話したくもなくなった。周りが楽しそうに話していてもだ。この場から早く離れたくて辛い。なぜなのかは自分でもわからない。だが嫌悪するものとは自然に離れたくなるものだろう?だから俺は何故そう感じるのか深く考えることなく時を過ごした。早々食って席を立った。
鬼に家族を喰われて、そのときはじめて1人で飯を食ったんだ。気が楽だった。息が楽でなぁ。飯はこんなに美味いものかと酷く幸せだった。
それだけだ。それだけだがな。
そういうことなんだよ善逸。
だからもう誘わないでくれ。炭治郎達と飯を食ってこい。

せっかく1人仕事のできる部屋を頂いたんだ。飯くらい俺の好きにさせてくれないか。




「だったら一緒に飯食おう」

「話聞いてたか、善逸」

部屋の戸の前で善逸が立っている。昼飯を食っていたらやってきた。この前もこんなことあったと既視感。前はしのぶさんだった。自分より年上の上品な女性。蝶を模した羽織りが風で揺れると幻想的で美しい。
今回は羽織りの黄色の濃淡に白い三角が浮かんでいる。それから派手な金髪。

「友人と、はわかんないじゃんか。お前の親御さんたちはもういない。やって見なくちゃわかんないだろ。俺はお前と炭治郎たちとみんなで飯が食いたいよ」

「...俺もう食いかけなんだけど」

これ見よがしに食いかけになった小皿の一つを見せる。元々飯を食うのは得意じゃない。生きるために食うだけだ。善逸は動かない。行きたくない。生まれて十年と半分ほど、やっと味のある飯を食えるようになったのに。

「.........」

「......行かないよ、俺」

無言の圧力が気まずい。なんで今日はそんなに粘るんだよ。わざわざ部屋まで来て。

「いいだろ一回ぐらい」

「.........」

こいつ誰かにけしかけられてないか。女好きだもんな。アオイさんか?

「.........
あ"ーもう面倒くさいな!!うじうじうじうじ、お前は俺かよ!」

「うじうじじゃない。本当に嫌なんだよ。
というか自覚はあるんだな」

「煩い!」

善逸は俺の膳を持ち上げ部屋を出ていく。待って待ってそんな強引な。立ち上がって部屋の戸を閉め善逸を追う。

「俺の飯...」

「しのぶさんたち心配してたぞ。折れろよ」

そういうことを言われると断りづらい。なにこれ、精進料理?俺の膳をまじまじ見た善逸が顔を歪めた。好きな食べ物は?水。はぁ!!?なにそれそれでよく戦えるね、身体どうなってんの。稽古つけてもらってた時は肉も魚も食ってたさ。

善逸についていきながらたわいもない話を続ける。昼の屋敷は静かだ。元々広い屋敷なのだから音はさほど届かない。善逸は耳がいいから聞こえるのかな。炭治郎はもう稽古に行っているという。きっと腹を空かせて昼飯につくだろう。話をする善逸の声は嬉しそうだ。これからもお邪魔させてもらうな、よろしく。誘ってもらったのに本当ごめん、やっぱり辛いから。4人の前に膳が並んだとき、俺がいう言葉はどちらか一つだ。前者が言えたらいいけれど自分でもどう思うのか見当がつかない。


「平気だよ。
ご飯はみんなで一緒に食べた方が美味しいんだ」

“音”でわかったのやら。善逸も優しいやつだから何か察してくれたのか。欲しい言葉をくれる。言ってることは俺の経験と真逆だけど。

「そうだな」

俺もみんなで飯食って美味いなぁって言いたいよ。
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