此岸でひととき

□10 神がそれを望まれる
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ある山々の、ある森の中。
神さまが地面に降りたちました。純白の布をふんだんに使った服装をしています。

そっけなく冷たい目つきであたりを見渡すとその神様は歩き始めました。飾がしゃらんと音を立てます。迷いのない足取りでした。まるで糸をたどるよう。


しばらく進むと森を切り開いた場所がありました。近くに村があるようです。祭壇を見つけます。祭壇の上のめのこは冷たくなっていました。神様はめのこを抱き上げます。

神様は踵を返してまた歩き始めました。
その歩みは草木を枯らしました。
服の裾から病をまきました。



川が枯れました。村人たちは次の生贄を立てて縋ります。みなしごのおのこでした。

それからようやく雨がふりました。
村人は喜びました。

それから雨が降りました。
地面がぬかるんでいます。長雨で外で火が使えません。

それから雨が降りました。
小川は氾濫したようです。住居に水が流れ込む。

それから雨が降りました。
村はなくなりました。全て流されました。


これでおしまい。めでたい話です。
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