此岸と彼岸のあれこれ
□ブッ飛んだ獄卒(候補)
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「旦那様、お久しぶりです。雪でございます。ちょっと今薬を飲んでまして、私も背が伸びました。
今日は私におつきあいくださいな」
雪は小鉢から丸薬を手にとり口元に近づけた。
「食べてくださいな。あら、それとも鬼灯に金棒で殴られたいのですか?どうぞ選んでくださいませ、旦那様」
雪の元主人はおそるおそる口を開け丸薬を飲み込んだ。すぐに脱力し泡を吹きがくがくと痙攣しだした。
「私、丹精込めて作りました。毒薬の納品は地獄の処罰用くらいしかありませんけど練習に作ったものがいっぱい余ってしまって。
みなさんもおひとつずつどうぞ。おかわりもありますからね」
雪の元主人の様子を見ていた村人たちはもちろん誰も口を開けようとしない。
「ううん、
それでは皆様にはこちらを」
小さな注射器を取り出すと今度は小瓶の液体をとり、縛られてた身体にそっと打った。看護師がするように丁寧で、しかし打たれた村人は目を血走らせ暴れ始めた。
「こちらのほうが苦しんでしまいます、この方のように。
あなたは夜番のときほとんど居眠りされてましたね。夜番は交代で眠るのにあなたはぐっすりお休みになるのだから私は毎日寝不足でしたよ。まぁそれほど困ってもいませんでしたから良いんですけれど。
聞こえてらっしゃいますか?
...鬼灯、この方を生き返らせてくださいな」
雪はそれから丸薬と注射器の1セットを1人1人に施していった。優しい笑みを浮かべてやってることは非常に残酷である。
(とんだ誤算でしたか)
そして見つけた、ブッ飛んだ獄卒(候補)。こんなに近くにいたとは。
「鬼灯、皆様を生き返らせてくださいな。終わったので帰りましょう」
「雪、今からでも遅くはありません。うちに就職してみてはどうです」
「嫌ですよ。私の今日のメインは金魚草です。閻魔殿に戻りましょうよ」