□廃帝の剣―side.Y―
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薄暗い教会の中で、キラキラと光るガラスを見上げる。目の前には薄汚れた十字架。足元には赤い染み。隣には大きな剣。埃っぽい空気は、浅く深く肺に入ってくる。
ぽたぽたと濡れる膝、頬。泣くのなんて、何年ぶりだろう。小さい頃は喉が潰れるまで大声を出して泣いていたのが、今は静かに泣けるんだから、俺も成長したんだな。


右腕が、気持ち悪い。


肘から手首にかけてナイフで一気にえぐられたそれは、もう感覚もないグロテスクなモノのようで。そのせいか頭が痺れて、元の自分の腕を忘れてしまったようだ。
動かせず重いだけの腕。もう切り落としたほうがいいだろうかと思いながら、掌についたマメを見つめる。ラケットの握り具合でできたマメ。
緑のコート。
黄色のボール。
打ち返す音。


「見ぃーつけた」


後ろから声がした。つい最近聞いたのに、とても懐かしい気がした。
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