◇
□迷子の案内人
1ページ/3ページ
――間違ってる。
――おかしいんだ。
――こんなの、ありえない。
何度も頭の中で繰り返した言葉。
何度も繰り返した叫び。
――だってありえねぇだろ。
――バトルロワイアルなんて。
合宿だった。バスの中で馬鹿騒ぎして、岳人と慈朗が跡部に怒られて、俺は長太郎とそれ見て笑って、それから全員でトランプして、いきなり眠たくなって、
気づいたら、ここにいた。
「くそっ‥‥‥」
分校を出てからずっと走っている。足がすりむけても、止まらない。
走る。
走る。
走る。
どこかで聞こえる銃声も、遠くで響く叫び声も、風の音で消してしまいたかった。
「宍戸!!」
呼ばれて、振り返る。
森の中の暗闇で、見慣れた赤がひょこんとのぞいた。
「岳人!」
「わっ!馬鹿!大声出すな!」
そう言いながら笑う岳人は、バスの中と変わらない。俺と同じバッグを持って、やっぱり一人だった。
「他の奴らは?」
「来いよ。全員集まってるんだ。お前を捜してたんだぜ?」
小さく手招きして歩き出す岳人。その仕草も変わらない。
さっき別れたばかりだけど、すごく久しぶりに会った感じで、涙が出そうになった。