もしもの話、すきまの話

□【戌】水風船
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どちらともなく歩き出した二人は祭りを堪能しつつ他の皆を探していたが、一向に見つかる気配がなかった


『うーん、皆いないねぇ…』

「…そうだな」


パシッと水風船を叩き、名前は食べ終わった苺飴の割り箸を通りのゴミ箱へ捨てる


『あ、りんご飴』


色とりどりのフルーツ飴と、赤以外にも、青色のりんご飴が並ぶ屋台が視界に入る


「さっきも寄っただろう…」


近寄ろうとすれば、隣に並ぶ久遠が若干呆れ気味の声を出し、酒の入ったカップに口をつける


『えー、さっきは青色なかったよ。
見てこうよ』

「どれも同じじゃないのか…?」


そういいつつ、久遠はその屋台まで一緒に来てくれるようだ

先程からいつもより狭い名前の歩幅に合わせてくれているし、やはりなんやかんやで優しいのだ


なんだかそれが嬉しくて、名前は小走りで屋台へ向かう


「らっしゃいっ!!なんにしやすか?」


これぞ祭りの屋台の親父、といった風貌の店主

先に屋台についた名前は少し吟味し、小さな姫リンゴを買うことにした


『この青色の姫リンゴ、一つ下さい』

「あいよっ!300円ねー」

「店主」


いつの間にか隣に来ていた久遠が、店主にお金を支払っている


『えっ、ちょっと久遠、私、自分で払うよ…!』

「うるさい。いいから受けとれ」


ズイッと、少し強引に袋に入ったりんご飴を差し出す久遠


『…ぅ……

あ、…ありがとう……』


受け取ったりんご飴を、両手で大事そうに持つ名前


「おっ、いいねえ!!
浴衣の似合う美男美女カップルかい!」

『…カッ…カップル…!!?
ちっ、違いま…!!』

ドンドンドン!


否定しようとしたところで、丁度太鼓の音が響き渡った


「おっ!!もう始まる時間かい!
二人とも見てきたらどうだい?絶賛間違い無しだよ!」


もうちょっと奥の方だからね!

そう教えてくれた店主は、次のお客さんの対応に移っていた


 
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