もしもの話、すきまの話
□【未】おねえさま
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「お姉様」
まだ紫春神社に来て数日。
縁側に一人で腰かけていた時、背後から穏やかな声が発せられた
その場には自分しか居なかった為、反射的に振り返ると、声の主である一色が、にこにこ、と此方を見ている。
しかし、自分がそう呼ばれたのだと気がつくのには少し時間を要した
『……
えっと…私?』
自らの顔を指差して首をかしげると、うんうん、と一色は笑顔のまま頷き、
名前の隣に腰かけた。
「小春のお姉さんなんでしょ?」
『んん……
まぁ、実の姉ではなくて遠い親戚なんですけど…』
「でも、小春は琵琶湖の洞窟で、貴女のことを"お姉ちゃん"って呼んでた」
『…よく覚えてましたね…』
「小春が言ったことなら、俺はなんでも覚えてるよ。
容姿も、匂いも、声も。俺は彼女の全部が大好きだから」
聞いている此方が恥ずかしくなる事を、一色は何食わぬ顔でさらりと言ってのける。
一色と出会って数日だが、いつも笑っていながら一線ひいているイメージだった。
篠からも、サイコパスの危険人物だと聞いていたからか、若干警戒していたのだが…。