干支の足跡

□5,息災だったか?
1ページ/4ページ




カタカタ


カタカタ

パチン


『おわっ…た…』


エンターキーを押すとともに、開放感が押し寄せる。

茨城から東京に帰って来たばかりの名前は、たまっていた仕事を片付ける為に遅い時間まで残業をしていた。


「えっ、椿さん、もう終わったんですか?」


向かいに座っていた同僚が、パソコン越しに残念そうな声をあげた。


『うん。
これで明日は心置きなく休めるわ…』

「はあぁー、いいなぁ…。
私もこの発注が終わったら帰ろー…」


彼女も今回、茨城の応援に行っていたので仕事がたまっているのだろう。
若干うなだれながらも、すぐにパソコンに向き合ってキーボードを打つ。


「じゃあ、お疲れ様でしたー。今度飲みに行きましょうねぇー」

『そうですね。お疲れ様でした』

「絶対行かないやつじゃん…」


気の抜けた挨拶をした後、飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に捨てその場を去る。





ギィィ…


従業員出入口の扉を閉め、空を見上げると、すでに暗闇につつまれ、星がキラキラと輝いていた。


ヒュウゥ…


『…
早く帰ろ…』


冷たい風が吹き、肌寒さを感じる。
歩き始めたのと同時に、近くの公園の方に、何やら人影が見えた。


『…?』


暗くてよく見えないが、あのシルエットには心当たりがあった。

駆け出した名前に向こうも気が付いたようで、此方に向かってくるのが分かる。


  
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ