「は〜ありがとう」

食事当番の兵士しかいない食堂に、取って置くようにお願いしておいた夕飯を受け取る。

「あの……」
「どうしたの?」
「あれ、どうしましょう……。あそこ以外は掃除し終わったんですけど」

恐る恐る指差す先には隅の方のテーブルで頬杖をついている小柄な人影が一つ。
その姿に一瞬目を丸くするも、すぐに笑顔が溢れる。

「私がやっておくよ。ありがとう、お疲れ様」

その兵士から布巾を受け取り、頬杖をついている人類最強の元へ近寄る。静かに夕飯を置くと、その寝顔をまじまじと見つめる。

「珍しい……、こんな所で居眠りなんて」

いつから居眠りしてて、いつ起きるのだろうかとスープを一口啜る。

「……にしても、無防備」

普段の剣呑な雰囲気からは想像も付かない寝顔についつい穴が空くんじゃないかというぐらい見つめてしまう。

「……可愛いなぁ」

本人が聞いていたら蹴りの一発でも飛んできそうな発言だが、幸い相手は居眠り中。まったくもって怖くない。

「ふぅ、ご馳走様でした。……さすがに起こした方がいいかな」

う〜んと考え込んだ末に、彼女は彼の横で腰を落とすと耳打ちをする。

「兵長、起きないとちゅーしちゃいますよ〜…………、なんちゃって」

自分で言っておきながら赤面しつつ、それでも起きる気配の無い彼に戸惑う。

「お、起きないなら、本当に、しちゃいますよ……」

しばらく待って、意を決した様にその無防備な額に唇を寄せる。
ちゅ、と可愛らしい音を立ててみせれば彼は少し身動いだ。

「……無理ッ」

耳まで真っ赤にした彼女は食器を片手に持ちテーブルを布巾で拭くと早足で洗い場に向かった。
彼女が立ち去った後、リヴァイはすぅと目を開ける。

「……」

不意に額に手を当てて、1人呟く。

「口じゃねぇのかよ……」

その不満を、彼女が知る由もない。



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