AoT Novels(L)

□それは確かに今、ここにある。
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リヴァイから渡された紙を元に記入表、確認表を埋めていく。数が全てあっている事を確認し、綺麗な文字でリオの名前が確認欄に刻まれた。

「……、よし。あとはエルヴィン分隊長に提出すれば終わりです。夕飯の時間過ぎちゃいましたけど、行きましょう」
「そこまで付いて行かなきゃダメか?」
「はい、提出するまでが仕事ですので。夕飯と紅茶はそのあとです」

紅茶を引き合いに出され、リオと一緒に地下倉庫を出るとそのまま隣に並び歩調を合わせる。
2人分の足音を響かせて階段をひたすら上り、リヴァイは半日ぶりにエルヴィンの部屋を訪れる。
ノックの小気味良い音を鳴らせば、中からエルヴィンの声が返ってきた。

「失礼します」
「リオか。随分早かったな?」
「リヴァイさんが手伝ってくれたんです。おかけで明日は篭らなくてすみました」

リオの言葉にエルヴィンは彼女の後ろの人影を認識した。なるほど自分が戻ってきたときに完璧な書類しか残されていなかったのはこういうことかと笑顔を零し、書類を受け取った。

「助かったよ。明日には全て注文をかけよう」
「そうですね、無いと困るものばかりですし。あ、すいません分隊長、私たち夕飯がまだなので、失礼しますね」
「そうか、間に合うといいな」
「こればかりは時間との勝負ですね、では」

軽く会釈をして部屋を後にするリオに、先程と同じように付いていくリヴァイが部屋を出ようとするとエルヴィンが声をかける。

「リヴァイ」
「なんだ」
「完璧だったよ。この調子で頼む」

リヴァイがにらめっこしていた書類をぱさぱさと片手で振り微笑むエルヴィンに彼は無言でそれを見つめるとそのまま部屋を出ていった。少々乱暴に閉められた扉にエルヴィンはまた1つ笑いを零したのであった。

***

「フィックごめん、もう全部片付けちゃった?」
「リオさんじゃないですか、まだ食べてないんですか?とりあえずまだ片してはないですけど」
「ちょっと色々やっててね。2人分貰えればいいんだけど……」

2人分?と疑問に思った調理担当の兵士はリオの少し後ろで腕を組んで立っているリヴァイを見つける。

「大丈夫ですよ。ちょっと待っててくださいね」
「よかった、ありがとう」

ほっと胸を撫で下ろしたリオはリヴァイの元へと歩み寄ろうとして別のものが視界に入る。

「えっと、全部掃除しない方がいいですか?」
「ううん、大丈夫。部屋で食べるから。フィックも、お皿とか全部私が片付けておくからやることやったら部屋に戻っていいからね」
「分かりました」

リヴァイはその様子を見て考える。リオが中心になって会話をしているところは笑顔が絶えない。彼女の人柄が良いこともあるだろうが、立ち位置的には彼らの上官に当たるはずなのにと。彼女のおかげでとけこみずつあるが、それでもリヴァイの知らない事はまだまだあった。

「お待たせしました」
「ありがとう。じゃあ、おやすみなさい」

***

「先に食べてていいですよ」

2人分の食事を並べるといっぱいいっぱいになるテーブルに向かい合うように椅子を置くと、リオは部屋の他の家具に比べて少しだけ華やかさを放っている棚から色々取り出しながらリヴァイに食べるように促した。その促しのままリヴァイは食事に手をつける。

「でも、今日は本当にありがとうございました。リヴァイさんがいなかったら、私まだあそこに篭っていたかもしれません」
「俺が好きでやった事だ……、気にするな」
「ふふっ」
「何が可笑しい」

顔を上げリオを見ても視線は交わらなかったが、リオはとてもニコニコとしていた。

「いえ、リヴァイさん、本当は優しい人なのに、見た目で損してるなぁと思っちゃったんです。人は見かけによらずって言葉を体現したような人、って思ってしまって」

そういうとリオはまた肩を震わせて笑った。何か言い返そうかと思い口を開いたがリヴァイは何も言うことなく食事を進めた。

「怒りましたか?」
「いや」
「よかったです」

次第に力が抜けるような香りが部屋に満ちていく。

「はい、お待たせしました。今度はゆっくり、もっと味わって飲んでくださいね」
「……善処しよう」

前と同じようにカップの縁に指を掛けて飲むリヴァイを見て、リオは微笑みながら紅茶を一口分傾けた。
昨日の夜からまともに食べてないのによくお腹がならなかったものだと我ながらよく感心し、1日ぶりの食事を喉に通す。

「……お前を探してた理由」
「え?」
「聞いてきただろう。俺がなぜお前を探していたのか」
「別に探してたわけじゃない、って言ってませんでしたか?」
「あの時は言ったな。が、本当は探していた」

不意に饒舌になったリヴァイに目を丸くしながら千切ったパンを口に運ぶのをやめた。

「……なんで探していたんですか」

その声は、まるで親が子にかけるような優しい声。リヴァイは、またなんでこんなこと言い始めたのかと自分が分からずにいた。

「お前の、リオの顔が見たかった……からだ、おそらく」
「!」

思いも寄らない言葉に少しばかり開いた口が塞がらなかったリオは、少し間を置いて言った。

「……おそらく、って、なんですか」

声が震えているのは、やっぱり性格は見た目とかけ離れているのかもしれないと思ってしまった結果で彼女に他意があった訳ではない。ただただ、ちょっと面白かっただけだ。

「笑うな」
「ふふ……、笑って、笑ってませんてば」
「もう少し完璧に誤魔化してから言え」
「もう、笑ってないです……!ふっ……」
「おい」

テーブルを挟んでの談笑は、日付が変わる頃まで続いたそうな。

2人の時間
(そういう事言っちゃうから、ハンジさんに懐いてるとか言われちゃうんですよ)(あっのクソメガネ……!)

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