金カム

□涙に誓う
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 何時までそうしていたのだろう。気づけば窓から差し込む光が鮮やかな茜色を帯び、店の中を照らしていた。
 もうそろそろ帰らなくてはと思った時、西日に導かれるように1人の人形が目に留まる。
 さらさらとした黒髪が日の光を反射し輝いている。きりっとした眉の下、長い睫毛に縁取られた瞳は閉じられていて、キャラメル色の肌はエキゾチックな色気があり、12歳程度の少年の姿をミステリアスにしていた。
 端正なその顔を見つめていると、不意に瞼が開かれる。囚われそうなほどの澄んだ黒目と視線を交差させると、時間の感覚をどこかに置いてきてしまったかのように感じた。
 私たちは惚けたように見つめ合い、この時が永遠に続くのではないかと思い始めた頃、前触れもなく終わりは訪れた。
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