金カム

□涙に誓う
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 プランツドール。ミルクと砂糖菓子しか口にしないその人形は、かつては貴族など高貴な身分の人間のみが楽しめる遊びだったらしい。現代においては一般の人でも飼うことができるそうだが、やはり費用は高くつくらしく、犬や猫ほど浸透してはいない。
 想像もつかない値をする人形に怖じ気づかなかったといえば嘘になる。しかし、高まった気分での思考回路は冷やかしくらい許してもらえるだろうという根拠のない結論を導きだし、私はいかにも高級そうな店のドアを開いた。


 カランカランと鳴るベルが客の来訪を告げても、中にいる小さな人たちはこちらを見ることさえしなかった。よくよく注視してみると小さな人たちは皆人形で、少女漫画でしか目にしたことがないようなふわふわのドレスやかっちりとした礼服を身に纏っていた。
 気づけば私は、一様に美しいそれを1人1人覗きこむように眺めていた。
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