もくもくと仕事をこなすサカズキ元帥。部屋には先程まで吸っていたのであろう彼のお気に入りの煙草の匂いがしていた。
そんな彼を見ながら、私は本を広げ近くの椅子に腰掛けている。
「サカズキさん」
「どうした、かずな」
私が話しかけると彼はキチンと作業の手を止めこちらを見てくれる。
だからついつい何も無いのに読んでしまう。
「なんじゃァ、また呼んだだけか?」
そう言いながらも彼は怒ったりなんてしない。
そんな彼をまた、見つめると彼は口端を釣り上げ手招きした。
私はそれにつられ、彼の元へ歩いていく。
「ね、サカズキさん?私の名前、呼んでください」
「· · ·かずな」
「もっと、お願いします」
「かずな、かずな、かずな」
彼は耳元で私の名前を呼ぶ。
何度も何度も。囁く。
それはまるで癖になる、なにかのような。
甘美なお菓子のようなものかもしれない。
名前あなたの声で呼ばれるからこそ。