Long Story
□第1話
2ページ/4ページ
時は遡って1年前の3月
「瑛人、もうすぐ着くから起きなさい。」
「…んん…」
時計を確認すると午前8時。
受験を終えてからは毎日9時まで寝ていたからその分まだ寝足りなかったがいつまでも寝ているわけにも行かないので体を少し前に起こす。
俺はこの春から東京にある大学、乃木坂大学に進学する。
と、言っても俺の出身は京都なので通うのはほぼ不可能なため大学近くのアパートで下宿することになった。
「七瀬ちゃんはもうあっちに着いてるみたいだから荷解き手伝ってあげてね。」
「あぁ、わかってるよ。」
口ではぶっきらぼうに応えながらも俺自身受験シーズンは七瀬に全く会えてなかったので久しぶりに会えることを楽しみにしている。
七瀬については後からまた紹介するとして…
「やっと着いたか…」
んん、と体を伸ばして新幹線から降りて駅を出る。
「じゃあお母さんもう帰るから、ホントは家まで着いていきたいんだけどごめんね。」
「大丈夫だよ。母さんも仕事があるんだから。気にしないで。」
簡単な挨拶を交わして母さんと別れて駅から少し離れた俺がこれから住む予定のアパートまで歩いて向かう。
途中近場のスーパーや本屋などこれからお世話になりそうなところをまわりながらアパートの前までやってくると
「…」
顔がよく見えないが女の人がアパートの入口の前で座り込んでいた
厄介事が嫌いな俺はその横を通り過ぎようとしたのだが…
「…七瀬?」
「あ、瑛人。」
なんと座っていたのは俺のよく知る西野七瀬だった。
七瀬は生まれは大阪だが実家が京都にあるためお盆とお正月は京都に帰ってきており同い年だった俺と七瀬はよくふたりで遊んだいたものだ。
七瀬も乃木坂大学に進学することになっている。
絵を描くのが好きで得意な七瀬は芸術学部に推薦で合格していた。
が、七瀬は人見知りでうまく大学生活を送れるか不安だったのか俺が住むアパートを聞くとすぐに
「ななもそこに住む!」
と、次の日には隣の部屋を契約してきたのだ。
今年は俺がまだ受験が終わってなかったこともあり集まりに参加してなかったので1年以上会ってないことになる。
久しぶりの再会を喜びたいところなのだが今にも泣きそうな顔をしている七瀬を見て
「なにしてんの?」
「それが…入居日間違えてて1週間はやく来てしまって…」
「何やってんだよ。とりあえず俺の家入りなよ。」
「ええの?」
「いいも悪いも七瀬を置いて帰れるわけないだろ。ほら、はやく。」
七瀬を部屋に入れた俺はとりあえず母さんに連絡することにした。