過去作のゴミ箱

□ココロノコエ
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うるさいうるさいうるさい……
頼むから…もう、やめてくれよ…

「弟者…?」

「え…、ど、したの?」

「お前がどうしたんだよ
どっか痛いのか?」

冷や汗が止まらず耳を塞いで座り込んでしまっていたようでおかしいと思った兄者が声をかけてくれた

「う、うん…なんでもないよ」

「なんでもないことねぇだろ」

『体調悪いならなんでいわねぇんだよ
買い物なんていつでも行けるのに…』

頭に流れ込んでくる兄者の心の声
優しくてあたたかい心配している声
兄者と一緒だから行きたかったんだよ

「ほら!もう大丈夫!」

できる限りの最大の笑顔で答えると
兄者はため息をついて頭を撫でてくれた

「あんまり無理すんな
ダメだって思ったらちゃんと言えよ
すぐ帰るから」

「分かったよ!」

撫でられた頭を手で抑え幸せを噛み締めるとすこし頭痛がマシになった気がした


―――


いつだったかは忘れたが
ある時いきなり心の声が聞こえるようになった
それも無条件で、何をしていてもどこかの誰かも分からない人達の声が聞こえてくる

『死にたい』

1番聞えてくる言葉はこれだ
朝起きた時、ご飯を食べる時、お風呂に入る時、寝る時、仕事中…いつでもどこでも聞こえてくる

「もう…勘弁してよ……っ」

枕で耳を塞ぎ頭蓋骨をひしめかせるほどの頭痛にひたすら耐える

「ゔぅ゙…っ…ぅ…」

低く小さな呻き声を上げ
布団に包まる

「弟者?」

コンコンとドアを叩く音に
ハッと正気を取り戻す

「な、なに?」

「ちょっと出てこい」

どうしたのかと想いフラつく身体を無理矢理起こしドアを開ける

「なんつー顔してんのお前…」

兄者の手が伸びてきて腕を掴まれるて引っ張られるとフラフラの足がもつれてしまいそのまま兄者の首元に引き寄せられた

「あにじゃっ…!?」

「ちょっと黙ってろって」

ぎゅっと抱きしめられた
頭を手で固定され兄者の胸に耳を付けられる

ドッドッドッ…とゆっくりとした安定感のある音に頭痛がすっと消えていく

「お前がなんで苦しんでんのかは知らないけど…俺を頼れよ…こんなんでもお前の兄貴なんだから」

『お前が苦しんでるのなんて
見たくねぇんだよ』

兄者の声だけは深く静かに聞こえた

「悪い、嫌だよな…」

抱きしめていた腕を緩め
離れようとする兄者を引き止める

「兄貴…もうちょっとだけ…」

素直に強請ると驚いた素振りを見せて
おねだりに答えてくれる

「おう」

「大好きだよ 兄貴」

「何言ってんだよバカ」

『俺も大好きだよ』

兄者の心音と声が癒してくれる
だから耐えられる…

「また…ぎゅーしてっていったら
してくれる?」

「当たり前だろ」

やっぱり兄者は最高の兄貴だ。


END


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