ワンダーランドは終焉に向かう

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人形は先ほどまで鍵がかかっていたはずの扉の中へと姿を消した。
アタシもそれに続いて中に入ると、所狭しと並んだ青い人形達に息を呑んだ。
部屋の奥に白く光る絵の具玉が見えたので警戒しながらそれを取りに行く。


「やった…最後の絵の具玉よ!」


これでイヴのところへ行ける。


一刻も早くこんな気味の悪いところから出ようと、急いで扉に手をかけた。
…しかしいつの間に鍵がかかったのか、開かない。


「うそ…さっきまで開いてたのに!?」


ガチャガチャと少し乱暴に取っ手を回してみるがやっぱり開かない。
ぴしゃりと絵の具がはねる音がして、扉に文字が書かれて行く。


"宝探ししようよ だれがカギを持ってるかな?"


キャハハハッ、人形達の笑い声が部屋に木霊する。
それがゲーム開始の合図。


まずは落ち着いて人形達を見渡すが、どれも見ただけでは分からない。
アタシはとりあえず近くにあった不自然にお腹が膨らんでいる人形のお腹を裂いた。
しかし中身は空っぽ。ハズレだ。


---『私は…レイラ』


ふと脳裏に聞こえる透き通るような声。…レイラの声。
疑問に思いながらも、また次の人形のお腹を裂く。


---『ごめんなさい』

---『さようなら、ギャリー』


人形のお腹を裂く度に、中に詰められていた綿が宙を舞う。
ハズレを引く度に、レイラの声がまるでシャボン玉のように脳裏に浮かんでは消える。
ああ。思い出した、何もかも。
アンタが消えた日。アタシがアンタを忘れた日。




あの日 、ごめんなさい。だなんて謝って非を認めたアンタに裏切られた気がして腹が立ったのよ。

アンタがそんなことするわけないって分かっていながら、周りの発言に振り回されて、もし本当にアンタが犯人だったらなんて信じきれていなかった臆病な自分にも嫌気がさした。
アタシの方こそもっとアンタのこと信じてあげればよかったのにね。


さようなら、ギャリー。その言葉が何度も脳内でリフレインされる。
少し悲しそうな、だけど全てを受け入れたような穏やかな表情でそう別れの言葉を言いのけるから
その時のアタシは去って行くアンタを追いかけれなかったの。

…追いかけていたらアンタのこと忘れずに済んだのかな。




「あった、カギ!」


あとはこれを使ってこの部屋から出るだけ。
でも見つけた時にはすでに遅かった。巨大な青い人形はもうすぐそこまで迫っていた。



"たすけて ギャリー"


今のはレイラの声?
最後に見たその人形の赤い瞳は泣いていた気がする。




ああ…なんだ。ここにいたのね、レイラ。






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