ワンダーランドは終焉に向かう

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お姉ちゃんがこっちでくらすようになってから毎日がたのしいの。
一緒に本をよんだり、絵をかいたり、お人形さんで遊んだり、おしゃべりしたり…。
お姉ちゃんがもともと住んでいた外の世界にはクッキーやケーキやチョコレート、あまくておいしいものがいっぱいあるんだって。
外の世界ってどんなところなんだろう。想像するたびにわくわくしたんだ。


だからここの皆はお客様をよんで、一緒にくらすのが好きだけど私は自分がでかけて行ってそのまま外でくらしたい。
もちろん、そのときはお姉ちゃんも一緒。それからここにはいない同い年くらいのお友達をつくるの。
でも私はお姉ちゃんとはちがうから、私がここからぬけるには外のだれかと入れかわらなきゃダメみたい。
だから毎日ねがってた。早くだれか来ないかなぁって。



私は美術館の言っていた "お客様" をさがしていた。
早く会いたいなぁって思いながら次の扉に手をかけようとしたら、いきなり出てきた女の子とぶつかって、しりもちをついてしまった 。


「ちょっと大丈夫?」


一緒にいた大人のひとがあわてて私をかかえあげて、立たせる。


「ねえ、アナタもしかして美術館にいた人じゃないの?」

「!」


この人達が "お客様" だ。私は気がついて、その質問にうなずいて答えた。


「やっぱり…アタシはギャリー。で、こっちの子はイヴっていうの」

「ギャリー…」


聞いたことのある名前だった。
あ、そうか。お姉ちゃんがよく口にしていた名前だからだ。
お姉ちゃんはギャリーのことが大好きだと言う。でも大好きってうれしいはずでしょ?しあわせなはずでしょ?
なのにどうしてお姉ちゃんは泣いていたの?お姉ちゃんの悲しい顔…私は見たくなかったよ。


…ギャリーだけお姉ちゃんを忘れて外の世界でくらしているなんて許せない。
だからギャリーがこっちに来てくれたこと、私とてもうれしいの。
だってこれでギャリーと入れかわって、お姉ちゃんとおそとに出ることができるもの。



「アタシたちも美術館にいたのに気がついたらこのワケわかんない場所に迷い込んじゃってて、
今なんとか二人で出口を探してるわけなんだけど…もしかしたらアナタもそうじゃない?」

「私も誰かいないか探してたの。外に出たくて、それで…」

「ああ、やっぱり!ねえ良かったら一緒に行かない?」

「うん、行く!」

「んじゃ決まりね。アナタ名前は?」

「メアリー…」

「よろしくねメアリー」

「うん、よろしくねギャリー。イヴもよろしくね?」


初めて見る同い年くらいの女の子のイヴもこちらこそ、と返事をしてくれる。とてもうれしいな。


…イヴとお友達になれるかなぁ?





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