短編小説

□不安
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轟side


…嫌な男だな

こんな気持ち、もうしたくなかった


自分が嫌いで仕方ねぇ

なんで俺はいつも、壊れちまうまで気づかねぇんだよ

もう失敗しねぇって、緑谷とだけは絶対にって…



家にひとりでいてもそればっかぐるぐる考えちまうし…外に行くか

相澤先生に課題出されてた気ぃするがそんなのもうどうだっていい

何も考えなくていい場所ってどこだ?


とりあえず俺は着替えるのも面倒で制服のまま家を出た




まだ日の暮れる前で俺ぐらいの歳の奴が何人かで群がって自分が世界一幸せだとでも言いたげな顔で笑ってる

俺も、ああいう風に、幸せそうに、

笑えてたんだろうな…


あぁ、駄目だ

どこにいてもあいつのことばっか考えちまう




誰か俺を助けてくれ


「えっもしかして雄英高校の轟くんですか!?私凄い応援してるんです!体育祭での轟くんすごいかっこよかったです!」


誰だ、こいつ

知らねぇ制服、知らねぇ女

でも、少しくねくねした緑色の髪に

どうしようもねぇ愛しさが溢れてくる


こんなの、馬鹿げてるってわかってんだ

でも、もしかしたらこいつが…


轟「…お前、緑谷に似てるな」


そう言うと目の前の女はパッと表情を明るくしてまた話し出す

「そ、それよく言われるんです!緑谷くんの女版みたいって。嫌ではないんですけど、髪はストレートがよかったなって思っちゃってて、」


よく喋るやつだな

でも俺はこれを鬱陶しいとは思わなかった

こいつは俺が好きなんだと、何故か手に取るようにわかる


嬉しそうに、目を輝かせながら

まるでオールマイトのことを話していた緑谷みてぇな、そんな風に話すこいつが

利用できる、なんて



本当にクズになったな、俺


轟「そんなことねぇ、俺はいいと思う」


いつだったか、1度緑谷の頭を撫でたように

優しい手つきで、髪の柔らかさを感じながら

俺はさっき初めて会ったやつに同じことをする


そうすると、一気に顔を赤く染め上げる

あぁ、あいつはこんなにはならなかった





お前なら、緑谷のことを忘れさせてくれるのか?
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