テニスのキング様
□嫉妬心
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私は跡部君から一歩距離をとる。
「なんで逃げんだ」
跡部君の問いかけに、私は下唇を噛んで俯く。
跡部君は黙って私の答えを待っていた。私はスッと息を吸って震える唇で言葉を紡いだ。
「だって跡部君……。好きな女の子いるんでしょ」
「…」
「…」
「は?」
跡部君の間の抜けた声が聞こえる。
「何言ってんだ」
跡部君が自然にそう言うものだから、一瞬勘違いしてしまいそうになる。
でも…。ここで流されたくない。聞きたくないけれど、嫌だけど、ちゃんとハッキリさせておきたい。
「跡部君をストリートテニスコートで見たの。女の子にデートしてくれるって…」
その瞬間、跡部君が軽く頭を抱える。そして軽くため息をついた。
「いいか、根津。最初に言っておくが、俺様は誰とも付き合っていない」
「でも」
「あれは…」
跡部君は片手で髪の毛をかきあげる。汗が滴り落ちて色っぽい。
私はほんの少し頬を染めながら、跡部君の言葉を待つ。
「お前が他のやつとテニスをしていたからだ」
「え?」
「していただろ。俺様以外のやつと」
ハッとする。
跡部君、もしかして…。
「見てたの?」
「俺様が直々に教えてやると言ったはずだ」