テニスのキング様
□バレンタインデー
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しばらくするとテニス部の活動は終わり、部員がこちらにやって来る。
き、きたっ!
そう思った瞬間、跡部君を含め部員は女子達に囲まれる。
出遅れた…。
私は柄にもなくオドオドとあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
チョコを渡した女の子達は今日は自由だからか、跡部君に話しかけまくっている。
一方の跡部君はというと、そんな女の子達の話に一切の反応を示していない。
跡部君の帰りが遅くなりそうな場合は私が声をかけるんだけど。今日だけは…許してもらおう。
それにしても私のチョコ、どうしよう…。こんなに人がいたら渡せそうにないし…。
ものすごーく嫌だけれど明日渡そうかな…。
私は深くため息を吐いて、踵を返す。
するとその時、後ろからどよめきが起きる。
「…?」
何だろうとテニス部員達の方を振り返ると、跡部君が険しい顔でこちらに向かって来る。
「おい」
「…」
「おい、根津」
え…。
私?と人差し指を自分自身に向ける。
「そうだ。そこでじっとしてろ。今から行く」