テニスのエース様
□補い合い
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私が小さく呟くと…
「藤原?」
私の名を呼ぶ低い声が聞こえる。
後ろを振り返ると、さっきまでレギュラージャージでテニスをしていた手塚君が何故か制服でここにいる。
「え?手塚君?さっきまで部活やってたはずじゃ…」
「部活の時間は終わったぞ」
「そ、そうなの!?」
考え事をしていてテニス部の練習が終わったことに気付いていなかったみたい…。
「藤原こそどうしたんだ」
「あっ!」
その一言にここに来た目的を思い出す。
「手塚君に返そうと思って。あの、これ」
私は両手でラケットの刺繍が入ったハンカチを手塚君に渡す。
「わざわざ持ってきてくれたのか。すまないな」
「う、うん」
手塚君に見つめられる。
そのせいか顔が赤くなるのが自分でも分かる。
そうだよね…。よくよく考えなくても手塚君かっこいいんだった。
「そういえばかるた部はどうしたんだ?かなり前からここにいたようだが…」
「え?えっと…かるた部は…」
手塚君に問い詰められてしどろもどろになってしまう。
鼻血事件のせいで畳が汚れて新しいのが来るまで、試合が出来ません…なんて言えないよね。
テニス部の後輩だって一生懸命練習していたらたまたまボールが窓ガラスに当たったわけで、しかもたまたまそのボールが私の鼻に当たったわけで。