テニスのエース様
□最悪な再開
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さっきの「ほ」は取られたけど、次の札は取られない。
一旦深呼吸して、札を見つめる。覚える。
「ただ有明の月ぞ残れる」
一瞬の間。そして
「あらざ」
スッ
これも相手陣。相手の左下段!!
思いっきり手を伸ばす。そして…取った。
その瞬間…バリンッとすさまじい音がする。音がした方を窓ガラスが割れているのが見えた。
そして、鼻に強い衝撃。畳にボタボタと赤い液体が流れ落ちる。
これは…
―鼻血??―
手を鼻にあてながら呆然と畳を見ていると、コロコロと黄色いボールが転がってくる。
これは…テニスボール、だよね。
その瞬間、窓ガラスがガラガラと空いて低めの身長の男の子が土足で入ってくる。
そう、土足で。
「大丈夫ッスか」とかなんとか私に言ってる気がするけれど、それどころではない。
土足は…。土足は…。
畳が土で汚れて……。
あまりのショックで眩暈がする。
手で鼻を押さえてはいるものの、ボタボタと血が流れ落ちる。
眩暈が、ヒドイ。
クラクラする。