テニスのキング様
□好きなタイプ
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私は跡部君から一歩距離をとる。
「なんで逃げんだ」
跡部君の問いかけに、私は下唇を噛んで俯く。
跡部君は黙って私の答えを待っていた。私はスッと息を吸って震える唇で言葉を紡いだ。
「だって跡部君……。好きな女の子いるんでしょ」
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私は一人で自宅を目指す。
今日はテニス部の練習は休み。本当は跡部君と話したいところだけれど。あっという間に囲まれてしまったし。その集団に入るスキがなかったし。
まぁ、たまには一人でゆっくりと帰るのもいいかも。
坂道をゆっくりと昇ると左に階段が見えてくる。
パンと遠くから聞こえる心地のいい音。テニスの音だ。
この階段の上にはストリートテニスコートがある。
そういえば…跡部君。テニス教えてくれるって言ってたし。跡部君と打ち合う前にテニス…見ておこうかな。
氷帝テニス部のテニスももちろんいつも見てはいるんだけど、跡部君に夢中になってテニスそのものは見ていなかったもんな。
私はグッと拳を握って階段を上る。
急な階段。結構体力が必要…。
心地のいいテニスの音がだんだん近付いてきて、テニスコートが見えてくる。
テニスをしていたのは私と同年代くらいの男の子二人がラリーをしている。