テニスのエース様
□バレンタインデー
1ﾍﾟｰｼﾞ/4ﾍﾟｰｼﾞ
「明日は特別スペシャルデー」
小声で歌いながら台所に立つ。持っているのはチョコレートと調理器具。
「バレンタインデーキス」
そう、明日はバレンタイン。女の子が好きな男の子にチョコを送る日。
私がチョコを送りたいのは…日頃かるた部のことでお世話になってる手塚君。
まぁ、同じ部長同士悩みを聞いてくれているのもあるし、迷惑もかけているし。日頃の感謝を込めて…でもあるんだけど。
でも、私。本当は手塚君のことが…。
私はブンブンと首を振って雑念を振り払う。
さぁ、油断せずに作ろう！
−−−−−−−−−−−−−
バレンタインデー当日。
今日の部活はテニス部との合同練習ではなくて、かるた部単独の練習。
新品の畳が来てからも、時々はテニス部と練習しているのだけど。でも、二週間に一回くらいで。
今日が合同練習だったらごく自然な形で渡せたのかもしれない…。
「わたのはら」
いきなり聞こえてきた読手の声にハッとして自陣を見るけれど、時すでに遅し。
今日の練習柿本君に囲い手されている。
「漕ぎ出でて」
柿本君がストンと札に手を置く。
これで柿本君は五連取。