テニスのエース様

□最悪な出会い
1ページ/5ページ

今まで入賞二回。この試合で勝って入賞三回すればA級に…。

私はジッと札を見る。

私の札は「あらざ」、相手の札は「かく」。一枚対一枚の運命戦。先に自陣の札を詠まれた方が勝つ。

「あ」から始まる札は16枚。対する相手の「か」から始まる札は4枚。普通に考えたら自分の陣にある「あらざ」が詠まれる確率は低い。

けれど…私の得意札は相手陣にある「かく」。

この試合…勝ってA級に…。

「あまの小舟の綱手かなしも」

読手が前の札の下の句を詠み始める。

……。

一瞬の静寂。

スッと息を吸う音が聞こえる。
そして…

「か」

―来たっ!!!−

反射的に相手陣に手を伸ばす。相手も手を伸ばしてくるものの、それより先に札を指先で払う。

―…勝った…―

「ぜをいたみ」

え?

自分で払った札を空しく見つめる。

「かぜを」?「かく」じゃなくて…。

お手付きだ…。完全に油断していた。まだ「か」で始まる札、残ってたんだ。

呆然としていると相手がお辞儀をしてくる。私もハッとして相手にお辞儀を返した。

試合終了…。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ