テニスのエース様
□最悪な出会い
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今まで入賞二回。この試合で勝って入賞三回すればA級に…。
私はジッと札を見る。
私の札は「あらざ」、相手の札は「かく」。一枚対一枚の運命戦。先に自陣の札を詠まれた方が勝つ。
「あ」から始まる札は16枚。対する相手の「か」から始まる札は4枚。普通に考えたら自分の陣にある「あらざ」が詠まれる確率は低い。
けれど…私の得意札は相手陣にある「かく」。
この試合…勝ってA級に…。
「あまの小舟の綱手かなしも」
読手が前の札の下の句を詠み始める。
……。
一瞬の静寂。
スッと息を吸う音が聞こえる。
そして…
「か」
―来たっ!!!−
反射的に相手陣に手を伸ばす。相手も手を伸ばしてくるものの、それより先に札を指先で払う。
―…勝った…―
「ぜをいたみ」
え?
自分で払った札を空しく見つめる。
「かぜを」?「かく」じゃなくて…。
お手付きだ…。完全に油断していた。まだ「か」で始まる札、残ってたんだ。
呆然としていると相手がお辞儀をしてくる。私もハッとして相手にお辞儀を返した。
試合終了…。